猫のためにリノベーションを施した住まいで、大好きな猫とともに暮らす。それは猫好きさんにとって、究極の理想なのではないでしょうか。
でも、現実はなかなか厳しいもの。そもそもペット飼育可能な物件がきわめて少なく、飼育可だったとしても、そのほとんどが猫と人に快適な空間にはなっていない実情なのです。
「もっとかっこよくて住み心地のよい部屋に暮らしたい!」
そう願う猫好きさんたちのために、猫と暮らせる住まいを専門に扱う「サノスケ不動産」の伊藤周吾さんを訪ねました。
ペットと暮らしたい人は多いのに、ペット可物件は極端に少ない。
ペットといえば犬と猫。ペットフード協会によると、2015年10月時点で猫の国内飼育数は987万匹、犬は992万匹ですが、犬の飼育数が年々減少傾向にあるのに対し、猫はじわじわと増加しているのだそう。ちまたにはさまざまな猫グッズや猫写真、猫動画があふれ、「今は飼っていないけれど、いつか猫を飼いたい!」と思っている方も少なくないでしょう。
しかし猫が飼える物件はきわめて少ないのが現実。そんな中、「ペット飼育可物件が少ないなら、自分たちで作ってしまおう」と立ち上がったのが、サノスケ不動産です。
サノスケ不動産を立ち上げたのは2014年9月です。一緒に事業を立ち上げた人間が、東日本大震災で被災された方々が飼っていた猫を保護する活動をしていたんですが、受け入れ先が非常に少ないという現実に直面したんです。
「ペットと暮らしたい」という需要は多いのに、供給されている数がものすごく少ない。あるいは、ペット可物件を探していても、うまく情報が探せない、というのもありますよね。ならばそれをうまく紹介するビジネスをやろうという発案が最初にありました。そして、そもそも「ペット可物件が少ないなら作ってしまおう」となった。
もともと不動産のオーナーや地主さんのコンサルティング業務をしてきたのですが、オーナーさんとしては空室をどう埋めていくか、ということに頭を悩ませているわけです。物件が古くなってくると、設備仕様の更新や改修にもお金をかけないといけなくなってくるじゃないですか。どうしても改修費用が発生するから、その費用を使って猫用にしてみませんか、という提案ができるし、それでオーナーさんも入居者さんもハッピーになれるだろうと。
サノスケ不動産では現在、独自の基準でセレクトした「猫フレンドリー」な賃貸物件を紹介しているほか、「猫仕様」のリノベーションや新築のご相談を承っています。"
"猫を飼っていてもいなくても暮らしやすい部屋" を提供したい
サノスケ不動産が手がけた、猫とヒトに心地よいリノベーションを施したモデルルームがあるというので、さっそく見学させていただきました。
猫がいない暮らしでもしっくりくる部屋を目指したいと思いました。キャットステップやキャットウォークはボックス型にしてデザイン性を高め、かつ飾り棚としても使えるようにしています。さらに猫が歩く際、行き止まりにならず、ぐるっと回遊できるようにレイアウトしました。
玄関には、帰宅時や来客時にドアを開けたとたんに猫が脱走してしまうことがあるので、脱走防止扉を。LDKと居室の間にも、キッチンでお料理をしたりするときにいたずらされないように仕切り戸をつけました。飼い主さんの姿が見えないと、戸をがりがりやって傷つける可能性があるので、どちらも格子戸にしています。
トイレや居室の扉にはくぐり戸をつけて、自由に行き来ができるようにし、バルコニーは猫が脱走しないように、かつ外の空気を吸えるようにと、フェンスで部分的に囲いました。バルコニーって実は専有部ではなくて共用部なんですよ。だいたい避難通路になっていて、端に避難ハッチがあったりするので、賃貸物件ではもちろんのこと、分譲マンションでもこのような造作はなかなかできないんです。こちらの住戸はたまたま角部屋で、バルコニーを部分的にフェンスでふさいでも避難通路をさえぎらなかったので、設置することができました。
このマンションは全住戸とも、猫の飼育が可能な賃貸物件で、入居者さんの希望によってさまざまなカスタマイズができるんですが、このフェンスは取り付けたいとおっしゃる方が多いですね。単に猫の脱走防止というだけでなく、写真のようにハンギングバスケットを吊るしたり、洗濯物を吊るすこともできる(笑)。それに、防犯にもなるんですね。端から見ると、「なんて用心深い人なんだ」と思われるかもしれないですけど、作ってみて、あとから「ああ、こういう効果もあるな」と気づきました。
そして、壁は自然素材のシラスを使ったシラス壁で仕上げています。南九州のシラス台地の火山灰で作った壁材です。湿気やニオイを吸ってくれるし、自然素材なので、ハウスシックなどの心配がない。さらに、傷がついたときでも、リペア用に同じ壁材が小さな瓶入りで売っているので、それを水に溶いて自分でかんたんにリペアできます。これは猫がいるいないにかかわらず、快適さを実感していただけると思います。