木や土、などのいわゆる自然素材を使った家。化学建材マシマシの家に比べて「なんとなく健康によさそう」「なんとなく気持ちよさそう」というイメージがある。

・・・でも、あくまで「なんとなく」なのである。建材にそれほど明るくない一般ユーザーで、その「よさ」をちゃんと理解できている人って、実はそれほど多くないんじゃないか。

そこで、十数年前から自然素材を使ったリフォーム事業に取り組むTRUSTさんに、ズバリ「自然素材の家はなぜいいのか?」聞いてみることにした。

自然素材、見た目は確かにいい

最近では「珪藻土」の壁や「無垢材」の床といった自然素材の認知度が高まり、中古住宅のリノベーションでも、これらは人気の建材として多くの人に選ばれている。

しかし、やはりどこかぼんやりしているユーザーメリット。それって天然ものをありがたがる日本人的感覚でなんとなく選ばれているだけで、実は化学建材と大して変わらないんじゃないの?

そんな疑念を抱きつつ、やってきたのはリフォーム会社のTRUSTさん。2002年の創業から一貫して自然素材を使用したリフォームを行っている。

横浜のマンションの一室にあるTRUSTさんのオフィス。執務室の手前にある来客スペースはショールームも兼ねていて、床や壁、天井までふんだんに自然素材が使われていた。

あら素敵なオフィスだこと。

天井と壁は珪藻土、床は無垢材のフローリング。凝った装飾のない至ってシンプルな施工だが、素材自体に味があるため無味乾燥とした空間にならず、あたたかい雰囲気を醸し出している。

個人的には土壁ってなんとなく暗くて重いイメージを抱いていたが、この空間は明るくてやわらかい。最近の土壁はいつの間にか垢抜けて、なんだか感じのいいやつになっていたのだ。

でも、本当に健康に良いの?

しかし、問題なのは見た目より中身ですよ。いくらオシャレでも、一番大事なのは多くの人が自然素材にぼんやりと求める「なんとなく体によさそう」という点である。

そのあたり、どうなんですか?

お話を伺ったのはTRUST代表の塚越岳人さん。趣味はキャンプ。

自然素材が体にいいかどうか、それを数値で表すことは確かに難しいですね。(塚越さん)

ほれ見たことか。専門家から鬼の首をとった僕はそれをぶんぶんふりまわして、自然素材業界の闇に切り込んでいく所存である。

だが、(自然素材みたいなやさしい笑顔で)塚越さんはこう続ける。

そもそも自然素材が注目を集めたのは、今から約10年前、健康被害をもたらすとされるアスベストやシックハウス症候群が、社会問題として大きく取りざたされたことがきっかけ。私が自然素材リフォームの会社をつくったのも、そうした問題解決の一助になればという思いがあったからです。でも、あれから10年経って新建材も進化し、健康に配慮した製品に移り変わってきている。そういう意味では自然素材だから安心で、新建材のものはダメと一概には言えなくなってきているのではないでしょうか。ただ、住宅業界全体からみれば、それは喜ばしいことだと思います。(塚越さん)

実際、TRUSTでもお客さんのコストに合わせて一部ビニルクロスなどを使う場合があるという。では、それでも自然素材を選ぶメリットとは何だろうか?

10年前に比べて、建築基準法の改正に伴い基準が厳しくなったこともあり、新建材に含まれるホルムアルデヒドの量等は減っています。(F★★★★:0.005mg/㎡h以下)ただ、ゼロではないので、そこがどうしても気になる方からすると自然素材はやはり魅力的なのだと思います。それに、自然素材にはさまざまな効能もあります。たとえば、珪藻土だとよく「呼吸する建材」なんて言われますが、家の中の湿気を吸って、乾燥すると、吐き出す調湿効果が知られています。快適に過ごすためには、湿度もとても重要なのです。また、ビニールクロスと違って、光の反射もおさえてくれるので目にもやさしく部屋を柔らかな印象にしてくれます。

ちなみに同じ珪藻土でも産地によって性能は異なるそう。写真は北海道の稚内の地層からとれた珪藻土の固まり。霧吹きで吹きかけた水をみるみる吸い込み、あっという間に乾く。大げさでなく、ホントにスポンジみたいだった。

また天然木のフローリングも湿気の吸収に優れています。さらに、無垢材のもつ質感や温かみはやはり、合板にはない大きな魅力だと思います。「木の温もり」ってよく言いますけど、実際にさわり比べてみると、無垢材は本当に温かいんですよ。(塚越さん)

左が無垢材、右が合板。目をつぶって触ってみたが、確かに無垢材のほうが温かい気がした。

写真右手に写っているのが、寝室におすすめだという麻のカーペット。遮音性と心地よい質感を兼ね備えた自然素材。

メンテナンスという点でも自然素材を使うメリットはあります。無垢材の床なら部分的に剥がれたり傷ができても、周りを少し削れば元通りの見た目になる。また、年を経るごとに味わいを増し愛着が湧く素材なので、自分で手入れしながら大切に長く住んでいきたい人にはぴったりですね。最近は、そうしたライフスタイルを選ぶ方が増えているような気がします。(塚越さん)

TRUSTでリフォームを行ったKさん邸では、リビング・ダイニングの壁に珪藻土を採用し、一部の壁塗りに家族でチャレンジ。自ら塗った壁が、家族の歩みとともに味わいを増していく。確かに愛着もひとしおだろう。

うーん、なるほど。ぼんやりとみんながいいと認識しているものは、しっかり話を聞いてみてもやはりいいものなんだなあ。

だからこそ、それなりにコストもかかるわけだが、そこは「家族が過ごす時間の長いリビングの床だけ無垢材に変えるとか、無理のない範囲で取り入れていけばいいと思います。」と塚越さん。

とりあえず、うちの実家のリフォームに自然素材を提案してみようと思います。

【取材協力】TRUST
http://www.trust-reform.com/