そう囁きながら、2階のリビングに通していただいて、またもや驚愕。
見てください、まるで倉庫か工場のような、インダストリアルな世界観!
古き良きアメリカのバーをも彷彿とさせるコーディネートは、7歳と3歳のお子さんがいるご家庭のリビングとは思えない完璧なかっこよさです。
どこからどこまでDIYしたか? このリビングは全部、ですね。(ご主人)
そう答える池本さんは会社員。不動産広告の会社にお勤めだそうですが、扱っているのはリノベーションが施された物件ではなく、ごく一般的な賃貸物件だと言います。
いやしかし、そんな!
全部DIYしたと言われても、この圧倒的なスケールを前に、にわかに信じることができません。味わい深い古材のフローリング、ざらっとしたモルタルとレンガタイル風の壁のコンビネーション、使い込まれたヴィンテージの建具。空間のどこを切り取っても、とても素人にできるとは思えないしつらえなのです。
ここに引っ越してくる前は、新小岩で新築のマンションを購入して住んでいたんですが、そこもダイニングの壁に古材風の板を張ったり、棚やキッチンカウンターを造作したり、DIYでどんどん手を加えていきました。でもだんだんマンションでは飽きたらなくなって、戸建てで思いっきり自分好みの家に仕上げたくなったんです。広いリビングがある家がいいなと思ってネットを見ていたら、たまたまここを見つけて。築5年で床面積は約100㎡。駅からかなり離れていましたが、二子玉川という立地のわりにはかなりリーズナブルだったので、見つけて1週間後には購入していましたね(笑)。内装は、内見をしたときに室内をあちこち撮影して、その写真を参考にスケッチブックにアイデアを描いて決めました。古材を床に敷き詰めたり、壁や天井にモルタルを塗るのは今回初めて挑戦したんです。(ご主人)
もとのリビングは白のクロス壁にごく普通のフローリングです。天井はもとからこんな風に高くて、勾配していました。間取りも、リビングとダイニングを仕切っていた引き戸を外したぐらいで、変えていないんです。
去年の8月、まず僕がひとりで越してきて、3日間で床貼りを仕上げました。床材は、古材やアンティーク家具が揃う「GALLUP」で購入したもの。かなり汚れがあったので、すべて洗ってから、接着剤と釘を使って貼り込んでいきました。で、3日後に家財道具一式と家族がやってきたので、そこからは週末ごとに手を加えていった感じですね。床を貼ったはいいものの、最後の塗装をする前に家具が運び込まれてしまったので、それからは週末に家具を移動させて、スポンジで磨いて、ウレタン塗装を2度施しました。(ご主人)
壁と天井のモルタルも、家具が運び込まれてから塗装しました。家具を真ん中に寄せて、ブルーシートを敷いて・・・、大変でした(笑)。モルタルについては事前にネットでかなり入念に調べましたね。それでもやり方がよく分からなかったので、実際のモルタル仕上げを見て研究したり、工具を見て想像してみたり。
モルタルを壁や天井に塗るためには、まずラス網と呼ばれる金網を下地に貼らないと剥落してしまうんですね。それで、壁と天井一面に、タッカー(巨大なホチキスのような工具)でラス網を貼り付けて、さらに、もしひび割れても剥落しないよう、モルタルは繊維入りのものを使い、専用の接着剤も練り込みました。
白レンガのように見える部分は、実はモルタルを塗った上から、ピザカッターで目地の模様を付けたんです。でも、最初にかなり広い面積にモルタルを塗ってから模様をつけたので、モルタルが途中で乾いてきてしまい、慌てることになりました。少しずつ場所を分けて塗りながら模様をつければよかったんですが、初めは段取りがつかめなくて。うまくいかなかった最初の部分は大きな布でうまく目隠ししてます(笑)。結局モルタルは全部で1.5トンぐらい使いました。(ご主人)
なんと、レンガだと思っていた部分は、モルタルに模様を付けたものだったとは! しかもピザカッターを使うとは、なんともユニークなアイデアです。
そして、高い天井までモルタルで仕上げるというのはとても素人技と思えませんが、高い脚立を2脚購入し、板を渡して足場を作って仕上げられたのだそう。天井のみ、会社の同僚にも手伝ってもらったとのこと。
リビングの横にあるお手洗いももちろんモルタル&古材フローリング仕上げです。
トイレそのものは業者に取り付けてもらいましたが、床貼りは自分でやりました。扉は間口より少し大きかったので、丸ノコで端を切り落として取り付けました。建具もすべて、GALLUPで購入したアンティークです。週末によく、インテリアショップ巡りをするんです。いい感じのアイテムを見つけると、用途を決めずに買ってきて、あとから「これで○○が作れるんじゃない?」とアイデアが浮かんだりすることも多いですね。(ご主人)