植物由来の “ミートボール” !?
イケア最新の取り組みを取材しました
「毎日をサステナブルに」をテーマに掲げ、多くの成果を出しているグローバル企業、イケア。
2020年9月29日、スウェーデン大使館で行われる新製品の発表会にご招待いただいたので、同社の最新のサステナブルの取り組みについて取材しました。
この日お披露目されたのは、植物性の原料を使ってイケアの定番商品・ミートボールを再現した「プラントボール」。キャッチコピーには、『お肉好きも満足』の文字が。
説明によると、環境に優しい食品を提供して、サステナブルな暮らしに貢献することがこの商品の大きな目的なのだそう。
動物性食品は植物性と比較して、温室効果ガスの排出量が総じて高いというデータがあり、世界中で年間10億個も売れているイケアのミートボールの一部を「プラントボール」に置き換えることで、環境負荷を抑えることができるといいます。
筆者も試食をしましたが、これがまた風味豊かで美味しい! 食感もミートボールにとてもよく似ていて、何も言わずに出されたら、食べても気がつかないほどの味わいでした。
「プラントボール」は、10月1日から全国のイケアにて販売中。ショップ内のレストランで提供されているほか、内容量500gの冷凍食品も購入できます。
詳細はこちら(イケア公式サイト)
お肉好きも満足のプラントボール!
発表会の後、同社のサステナブルの取り組みについてインタビューをさせていただく機会をいただきました。
教えてイケアさん! 無理のないサステナブルの実践法って?
イケアの「サステナビリティレポート」を見てみると、その取り組みは、再生可能エネルギーの利用や労働環境の向上、販売した家具のリサイクルなど多岐にわたっており、しかも世界中の製造拠点や店舗にて実行されていることが報告されています。
では、わたしたち生活者にとって、イケアの商品を選ぶことはどんな貢献につながるのでしょうか? 発表会の後、イケア・ジャパンの岩﨑有里子さんと平山絵梨さんにお話を聞きました。
Q:イケアの最新の取り組みを教えてください!
商品開発の分野では、2030年までに製品に使用する素材を再生可能なマテリアル、もしくはリサイクルマテリアルに置き換える、という大きな目標があります。「責任ある資源調達」として竹のように成長が早く、環境負荷の少ない木材を使用したり、「ベター・コットン」というより持続可能な綿を調達しています。
また、不要になったイケアの中古家具をイケアが買い取って、メンテナンスや再生をした上で再販する「家具買取りサービス」といった、モノの寿命を伸ばしていく取り組みも実施しています。
今年からは特に、いかにお客様と一緒に問題を解決していくかに力を入れていて、日常の何気ない行動にスポットライトを当てて、ムーブメントを起こしていきたいと考えています。たとえば、「IKEA Better Living」という自社開発のスマートフォンアプリ。アプリを開くと、環境負荷の低減に貢献できる様々なアクションが見れて、『あ、こういう行動もCO2の削減につながるんだ』という気づきを、楽しみながら学ぶことができます。
Q:サステナブルの普及に大切なことって?
「ユーザーが手軽に選択できる」という部分はとても大事だと考えています。国内のお客様に市場調査を行って判明したことなのですが、約80%の方が『環境にいいものがあるなら、そちらを選択したい』という考え方をお持ちなんです。しかし、実際の行動になると、これが半減してしまう。
そのギャップの原因を探ると、『何を買ったらいいかわからない』『どの商品が環境にいいのか知らない』といった、情報や知識のコミュニケーション不足が浮かびました。そしてもうひとつの原因が、価格です。
市場を見渡してみると、サステナブルやエシカルな商品は通常よりも高い値段で売られているものが多くあります。出費をしてまで地球に良いことをするのはなかなか難しいのが実情です。しかしイケアはブランドとして “より多くの方々の手に届く価格” というこだわりを持っていますので、デザインや素材の工夫によって、低価格でサステナブルな商品をお届けしています。
『イケアの商品を選ぶことは、サステナブルな社会につながるんだ』と思っていただけるとうれしいですね。
Q:日本国内で、特に住宅分野での取り組みはありますか?
2016年に、UR都市機構と共同で「イケアとURに住もう」という団地リノベーションを手掛けました。当時は今よりサステナブルという言葉がまだ浸透していませんでしたが、「サステナブル・リビング」というコンセプトを設けて、誰もが手に届くようなサステナブルな暮らしを提案しました。
住まいという分野でのサステナビリティは、民間企業単独でなく、公的機関や消費者も一体となって初めて実現できると思います。今後も様々な方と協力していきたいですね。
Q:日本でサステナブルを浸透させていく上で、今後解決すべき課題は?
日本人には “もったいない精神” や、ムダを無くしてモノを大事に使っていくような伝統的な価値観を持っているので、サステナビリティという考え方はすごく共感されると思うんです。
今年は特にオリンピックイヤーということもあって、サステナブルという単語が注目されていますが、個人的にはやはり気候変動に対する認識をもっと深めて行くべきだと思っています。
市場調査をした際に、気候変動に対する認知率はグローバルの平均が約60%、日本では約30%という結果が出ました。メディアで異常気象の話題が取り上げられても、その背景にある地球温暖化という部分までは言及されていないのを、ひとりの消費者として感じます。
今日発表したプラントボールのように、気候変動を難しく捉えずに、楽しみながら気づけることが大切です。店頭に並んだ時に、「なんでプラントボールって名前なんだろう?」という素朴な疑問から、地球規模の大きな問題に少しでも気づいて欲しい。民間企業である私たちとしては、そんなきっかけになれるように、努力を続けていきたいと思っています。
編集後記
今回の取材では、サステナブル社会の実現のために素材から流通、リユースまで全方位的にサステナブルな商品をデザインし、販売しているイケアの熱意がとても印象的でした。
SDGsで掲げられたゴールを達成するには、社会的にまだまだ多くの課題が残されています。大切なのは、インタビューでも語られたように、ユーザーにとってサステナブルがいまよりもっと手軽にできる選択であることではないでしょうか。
わたしたちカウカモも、中古×リノベーションの分野でサステナブルな暮らしを普及させるために、習うべきことがたくさんあるように思います。
サステナブル社会の実現に向けた取り組みに、今後もご注目を!
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地図:https://goo.gl/maps/JpvrnxH9ycNh8cHN9
取材・文・撮影:cowcamo