こだわって造った住まいだから、大切に住み継いで欲しい。「住み継ぎの先輩に聞く!」では、そんな想いのこもったバトンパスの物語をご紹介。カウカモの「売却サポート」で住まいを売却した方、購入された方の双方にインタビューを行い、新しい住人の元でどのように活かされているかをレポートします。
今回訪れたのは世田谷区のとあるマンション。こだわりのフルリノベが施された住まいが、そのままの姿で住み継がれていくストーリーをご紹介します。
【売却時の住まい】
カウカモエージェント念願のフルリノベ
《住まいについて》
前オーナー:青山 尚平(カウカモエージェント)
現オーナー:Hさん
場所 :世田谷区
間取り:1R
面積:38.47㎡
築年数:築42年(取材時)
内装:青山=未改装状態からフルリノベーション/Hさん=購入後そのまま居住
今回紹介する住まいは、三面開口で風通し・日当たり良好の開放感あふれるワンルーム。実は、この物件の売主はカウカモエージェントの青山。エージェント業をはじめて、兼ねてから実現したかったフルリノベを施した住まいだった。
青山:会社のメンバーはリノベ暮らしを満喫している者が多いので、リノベをしていないことがちょっとしたコンプレックスでした(笑)
青山:この物件は、不動産のプロである僕の目から見て、“いい中古マンションの条件” をほとんど満たしていたんです。
「自分でリノベーションできる価格帯の物件」「職場まで自転車圏内」のふたつを要件に住まいを探していた青山。この物件を購入した決め手は、なんと言ってもその管理状態のよさ。購入当時、玄関扉の交換や配管の更生工事が完了しており、窓サッシの交換も予定されていたのだ(※)。
(※これらは、マンションの共用部扱いで個人で工事ができない。なお現在、窓サッシは交換済み)
さらに、新耐震基準に適合している上、修繕積立金も十分に貯まっていたため、『この物件で決めるしかない』と即購入を決断したのだそう。
ただそこで、ネックとなったのが真一文字に室内を分断する梁(はり)の存在感だった。
青山:この梁をうまく利用してリノベーションができないかと考えました。
約40㎡という決して広くはない面積で、できるだけ開放感を得るには梁の圧迫感を抑えることが最重要でした。
そこで、この梁を “ゾーニングの仕掛け” として扱ったんです。
天井に目を向ければ、このワンルーム空間は梁を境としてキッチンとリビングに分節されていることがわかる。
そして、梁に間接照明を仕込んで天井をすっきりと見せたことも部屋を広々と感じさせる工夫のひとつだ。
青山:水まわりも、洗面台とトイレを 2in1でコンパクトな仕様にしたので、『40㎡目一杯居住空間です!』と言えるような家に仕上がったかなと思います。
【売却について】
次の住まい手に暮らしの提案を
そんなこだわりの住まいを、どうして売却することになったのでしょうか。
青山:ひとことで言えば、結婚とコロナ禍ですね。パートナーと一緒に住もうとしたタイミングが、ちょうど緊急事態宣言の真っ只中。ためしに半日一緒に生活してみたら、お互いのzoom会議の音が反響してしまい、仕事にならないことがわかったんです。
コロナ禍がなかったら、まだここに住んでいたかもしれません。
売却活動の中でこだわったのは、カウカモで掲載される物件記事の写真だと話す青山。
青山:例えば窓辺のベンチだったり、家をつくるときに “居場所の多さ” を大事にしていたので、写真でその居場所をちゃんと見せきることを意識しましたね。
記事の取材を受ける際は、売ろうとしている家を自分自身が十分に住みこなしきれているかを見つめ直して、もっといい収納の使い方や家具の置き方を模索してみると、住まいへの “愛” が伝わる内容になると思っています!
現オーナーのHさんは、そんな想いで撮影された売却時の記事を読んで、『住まい手が大事にこの家をつくったことがよく伝わってきた』と語ってくれた。
Hさん(現オーナー):部屋全体の様子はもちろん、夜の照明の雰囲気から収納の真鍮製取っ手のディテールまでしっかり紹介されていたので、読んでいて面白い記事でした!
さらにオープンルームを開催するにあたって、普段カウカモエージェントを務める青山ならではの工夫があった。それは、この住まいを案内するエージェントに向けて資料をつくったことだ。
青山:住んでみてわかったメリット・デメリット、日常使いしているお店など、記事では伝えきれなかった細かい部分も含めて、ここでどんな暮らしができるのかをエージェントに自信を持って提案してもらいたかったんです。
当初、『自分のこだわりがひとりよがりだったらどうしよう……』という不安はあったのですが、住まいの魅力を伝え切ることができれば、新しい住まい手の方とちゃんと巡り逢えることがわかってホッとしています。
【現在の住まい】
そのままを受け継いで
それでは、青山の手を離れた現在の住まいを見ていこう。
『青山さんのリノベが素敵すぎて手を加えるところがなかったです!』と話す通り、Hさんは以前とほとんど変わらぬ形でこの住まいを住み継いでいた。
検討当初から、リノベ済み中古マンションに絞って家探しをしていたHさん。この物件は立地の利便性やマンションの管理状態、耐震性もさることながら、その内装に強く惹かれるものがあったのだそう。
Hさん:家探しで大事にしていたのは、「風通し」と「キッチンの充実」でした。
ここはそんなわたしにとって最も大事なポイントを満たしていたんです
。マンションの諸条件がいい上、この平米数でこんなに広いキッチンとたくさんの窓があることは珍しいので『すぐに売れてしまうのでは』と思い、購入を即決しました。
実は、この住まいにある家電類も青山からそのまま受け継いだものがほとんどだ。
青山:ここの家電類はデザイナーさんにすべてセレクトしてもらったんです。どこにいても家電が目についてしまう間取りなので、ミスマッチなものが並んでいるともったいないなと。
さらに、窓枠を利用して取り付けられたスクリーンも以前の住まいから受け継いだもの。プロジェクターの台座は、青山がこの住まいに合わせて特注した一点ものだ。
Hさん:青山さんから家電類の売却の話をいただいて、せっかくなので全部買い取らせてもらいました(笑)
プロジェクターって今まで使ったことがなかったんですが、コロナ禍で外出しにくいのもあって大活躍しています。
この住まいで好きな場所は “窓辺の空間” だと話すHさん。窓周りに造り付けられた棚には、海外赴任の際に集めたお気に入りの品々が並んでいる。
Hさん:街と風を感じられて特に素敵な場所だなと感じます。ここから外を眺めてぼーっと過ごす時間が好きなんです。自分には窓辺にベンチを造る発想がなかったので、この家を住み継いだおかげでこうした過ごし方の魅力に気づくことができました。
Hさんはマンションの管理状態やその立地から、この物件はリセールの面でも優れていると考えたそう。転勤等で今後引っ越す可能性も高く、次に住み替える時には『この家は大事にしてくれる方に売りたい、次の家は自分でゼロからリノベをしたい』と話していたのも印象的だった。
きっとこの住まいは、いつかまた素敵な住み継ぎのストーリーを紡ぐのであろう。
担当エージェント:水村 香織/撮影:沢崎 友希/取材・文:本多 隼人