cowcamo magazine 9月号のテーマは『TOKYO研究 #2』。
そこで今回は、東京のあらゆるアートイベントやスペース情報を発信している「Tokyo Art Beat」のおふたりに、東京のアートシーンを研究すべくお話を伺いました!
アートが好きな方にとっては、美術館で観賞することやギャラリーに足を運ぶことは、日常的なことかもしれません。しかし、馴染みのない方にとっては、実はハードルが高いことも。
でもそんな方も、きっとアートの楽しみ方を知ったなら、東京の街のまだ知らない一面に惹き込まれてしまうのではないでしょうか?
日々の暮らしに彩りが加わるアートの楽しさを、一緒にみつけていきましょう。
あなたの身近な暮らしに、素敵なアート情報が届く!
東京都港区西麻布にある『Tokyo Art Beat(以下TAB)』は、「アートやデザインの魅力を発見し、ライフスタイルの一部として楽しんでもらいたい」という思いのもと、2004年にスタートしました。
今回ガイドしてくださったのは、マネージャーの富田さよさんと、ブランドディレクターの田原新司郎さん。おふたりにTABでどんなことをしているのか、詳しく聞いてみたいと思います。
ーアートをより身近なものにすべく、どんな取り組みに力を入れていますか?
TABは、アートとデザインのイベントに特化して取り上げているウェブサイト。展覧会やトークイベントを網羅するように、日本語と英語の両方で掲載しています。現在は、東京、関西、ニューヨークを拠点に各地域で情報発信をしています。(田原さん)
アート情報をカジュアルに取り上げていることもTABの特徴かもしれません。「明日時間があるから、ちょっとふらっと行ってみようかな」という感覚で使ってもらえたら嬉しいですね。初めてアートに触れる人や、そこまで知らない人の、入り口になれたらいいなと思っています。(富田さん)
ウェブサイトだけでなく、お得に美術館めぐりができる、美術館の割引券アプリ「ミューぽん」の販売と提供もしています。ミューぽんがあれば、美術館・アートイベントの割引券をスマートフォンで持ち歩くことができます。(田原さん)
マイルームのインテリアにも! 壁に貼れる「Tokyo Art Map」
壁に貼って使えるポスター型のフリーペーパー「Tokyo Art Map」も発行しています。こちらは、東京近郊の美術館やギャラリーはもちろん、アパレルなどのショップ、書店やカフェなどに配布中です。(田原さん)
10年続けて、今も新しい発見があることの喜び
ーTABのはじまりの経緯や、みなさんがどんな思いで活動されてきたのか気になります。
始まった当初は、僕はユーザーでした(笑)。関わってくれている方みんなが、TABが大好きでユーザーでもあるんですよ。もともとは、フランス人2人と日本人1人が意気投合して始まりました。そこから、共感してくれる方が続々と現れて、今も関わってくださる方々に支えられています。2年前に10周年を迎えたのですが、10周年パーティーにはたくさんのユーザーの方が来てくださいました。(田原さん)
そうですね。TABを好きだと言ってくださる方は、面白いことが本当に好きで、よく見てくださっているんだなあと実感します。TABは、常時400件〜600件くらいの情報が載っていて。ひとつひとつの情報は、人の手でチェックしながら入力しています。この情報を、どういうふうに見てくださるのかを考えながら、作っています。(富田さん)
アートを好きな方が多く見てくださっていますし、ファンの方がいるのを感じているので、今後ももっといろんなことをしていきたいなと思っています。10周年のパーティーもそうですけれど、インターネットだけでなく、リアルでも会える機会も増えていますからね。(田原さん)
これからの東京とアートって? 街に出かけると出会える楽しみ
東京のいろいろなエリアのアート情報を網羅されているTAB。これから東京で盛り上がっていきそうな場所について、聞いてみました。
ー今、注目のエリアやスポットはありますか?
う〜ん。実はエリアを絞るのが難しいんですよね(笑)。東京はいろんな地域に分散化していたりします。(富田さん)
東京の街自体が広いというのもあるでしょうね。小さい街が集まって東京になっている。だからこそ、どこまでも楽しめる魅力があります。(田原さん)
そんな中でも、これから盛り上がっていきそうなスポットを少し紹介しますね!
TABでは、「TABlog」というアート情報をブログ記事で発信しているのですが、ここで過去に紹介したこともある天王洲アイル周辺はオススメですよ。
東京も、何年かごとに動きがあるという印象がありますね。天王洲アイルの周辺は、寺田倉庫さんが、いろいろな事業を手がけられている。街の中に楽しい動きやアートがあったりして。これから、更にいろんなものが見られる場所になるのかなと思っています。T-Art Galleryや、「PIGMENT(ピグモン)」というショップもオススメです。(富田さん)
今後も、9月にオープン予定のスポットもありますし、これから行くといろんなアートに出会えるのではないでしょうか。散策しながら1日楽しめると思いますよ!(富田さん)
東京を歩くと出会う、 アートと街のつながり。
ー他にはどこか歩いていてアートを感じられる街はありますか?
そうですね。谷根千エリアは、街歩きをしながらアートに出会えますし賑わっていますよ。
もともとは銭湯だった、SCAI THE BATHHOUSE(スカイザバスハウス)や、お店と工房と住まいがつながっている上野桜木あたりもオススメです。
谷中にあるHAGISOは、カフェ、ギャラリー、設計事務所などがあり最小文化複合施設と言われています。(田原さん)
わたしは、上野桜木あたりにある、Kayaba Bakeryでいつもパンを買って帰ってしまいますね(笑)。(富田さん)
街に出たついでに、アートを楽しめるのっていいですよね。食とアートは、まさにそうで。美術館に行くだけじゃなくて、食べたいもののついでに行ってみようという感覚。
例えば、清澄白河にブルーボトルコーヒーができて、ギャラリーにお客さんが増えたと聞きますね。せっかく行くのだから、その目的地だけではなくて、街も歩いてみようという感じで行ってもらえたらいいですね。(田原さん)
ーまた、これからの東京とアートの関係性で、注目している動きはありますか?
この10年で、「ファッションブランドとアート」という流れがあるのは感じています。ハイファッションブランドが、アートを支援している動きが出ています。(田原さん)
そうですね。表参道のお店の中にもアート作品がとても並んでいます。それが、すごく自然なんです。空間の中のインテリアとして、アート作品を見せる。(富田さん)
ファッションブランドからのアプローチで、彼らが持てる空間だからこそ、アートに触れられる機会をつくれる、と思うとファッションの力をとても感じます。この5年10年は、そういう流れがあるのかなと感じています。
また、東京の街全体を見ていても、日常の暮らしの中に、アートを溶け込ませていくことを、都市として大事にしているのかなとも思います。(田原さん)
暮らしの中のアートと出会うことは、新しいコミュニケーション
ーそれでは、自分の暮らしの中にアートそのものを取り入れる楽しみや、秘訣について教えてください。例えば、絵を買おうとしたときに、どう買ったらいいか分からない人も多いと思います。
アート作品を完全に理解するのは、誰もが無理だと思うのですが、もしも現代の作家さんであれば、ご本人に聞いてみてもいいと思うんですよね(笑)。聞いてみてもわからないかもしれないし、謎が深まるかもしれないんですけれど。(田原さん)
絵を買うタイミングとして、人生の節目に作品を買うというのは、良いと聞いたことがあって。作品をみるときに、そのときの気持ちを思い出すというか。(富田さん)
買うのには、オークションという手もありますけれど、ギャラリーに行ってみて、じっくり見て買うのがいいと思います。作品について話を聞くこともできますし、思っている以上に柔軟に相談することができますよ。買った後のメンテナンスやケアの方法も教えてくれますよ。(田原さん)
新しい関係やコミュニケーションも生まれると思います。普通の買い物なんですけれど、また違うというか。一点もののお洋服を買う感覚。(富田さん)
しっかりコミュニケーションをとってから購入することで、大切にしていこうという意識も芽生えるかもしれません。作品から感じること以外の楽しみもあると思います。少し大人の楽しみ方というか。(田原さん)
ー買うときのストーリーも楽しみながら、暮らしの中にアートを取り入れる楽しみ方があるんですね。最後に、今後の展開を教えてください!
「Tokyo Art Beat」アプリのリニューアルを考えています、発売して6年経っているので、使いやすさや見やすさを良くしていきたいなと思っています。見ている方の感想や体験を共有する場もあるといいのかなと。みなさんの意見を聞きつつ、面白いかたちをつくっていきたいですね。もしも、こういう感じで感想をシェアできたらいいな。というアイデアがありましたら、お待ちしています!(田原さん)
誰かの感想を知ることや聞くことで、行ってみたくなることもあると思うので、リアルの場でもオンラインがきっかけでも、もっと足を運んでもらえるツールになるといいなと思います。 出すからには、いい形にしたいと頑張っています。ぜひ、使っていただいて、今後も良くしていけたらと思います。(富田さん)
時間があるから、ちょっと行ってみようかな!を身近に
今月号テーマである「TOKYO研究」にちなみ、Tokyo Art Beatのおふたりをガイドにお送りした、アートシーンを巡るお話はいかがでしたか?
美術館やギャラリーと聞いて気構えることなく、「ちょっと行ってみようかな」くらいの気分で街へ出かけてみるのもオススメです。 今後、リニューアル予定のアプリも楽しみですね。
みなさんの暮らしがすこし楽しくなる、そんなアートに出会えますように!
■取材協力: Tokyo Art Beat(東京アートビート)
ウェブサイト:http://www.tokyoartbeat.com/
取材・文:藤本彩/撮影:cowcamo編集部/写真提供:Tokyo Art Beat