カウカモマガジン6月号は、クラウドファンディングMakuake特集!!
Makuakeスタッフおすすめの、暮らしをより楽しくしてくれるプロダクトを順番にご紹介していきます。
今回ご紹介するのは、「これは欲しかった!」と支援が殺到したこちら・・・!
あなたはどんな風景が見える部屋に住みたいですか? パークビュー、シティビュー、それともオーシャンビューでしょうか。今回ご紹介するのは、そのすべての風景が見られる窓なんです!
一体どういうこと・・・? そう思った方もきっと多いはず。今回は、そんな、未来の窓「Atmoph Window(アトモフ ウィンドウ)」を開発したAtmoph(アトモフ株式会社)の創業者である姜京日(かん きょうひ)さんに、開発の裏側やプロダクトの魅力についてうかがいました。
世界を旅するように暮らせるデジタルな窓
「Atmoph Window」とは、4K撮影された世界中の美しい景色を映し出すデジタルな窓のこと。現在300種類を越える豊富な映像アーカイブの中から、見たい風景をスマートフォンで選びダウンロードするだけで、多様な景色を楽しむことができます。高性能マイクで集音された現地の音声も、臨場感を高めるポイント。しかもランニングコストは、白熱電球の約半分だそう。
ハワイの海を眺め、さざ波の音を聞きながら読書をしたり、パリのエッフェル塔を眺め、行き交う人々のざわめきを聞きながらカフェタイムを過ごしたり。どんな風景の中で何をしようか・・・考えるとワクワクしてきますよね。
姜さんは、「さり気なくそこにある、本物の窓のように使ってもらいたい」と言います。
Atmoph Windowは、テレビやタブレットのような情報の主張をしない、生活に寄り添い潤いや広がりをもたらすプロダクトです。どんな部屋にもしっくりと馴染むように、ディスプレイのフレームは、木目調やモノトーンでシンプルに仕上げました。
さらに、デジタルの窓として壁と一体化するよう、厚みは55mmに。そして壁に傷をつけるのを嫌う日本の住宅環境でも壁掛けで使えるように、細い釘でも支えられる4.9kgまで重量を押さえました。(姜さん)
デジタルガジェットというと、さまざまなボタンが付いていたり、メタリックなあしらいがあったりするものですが、Atmoph Windowは至ってシンプルな佇まい。これならお部屋の中で主張し過ぎず、インテリアの一部として溶け込んでくれそうです。
アイデアを実現に導いた最新のテクノロジー
ーAtmoph Windowのアイデアを思い付いたきっかけは、自身が体験したストレスだそうですね?
はい。10年前にひとり暮らしをしていた頃、僕は窓を開ければ隣家の壁が見えるような部屋に住んでいたんです。当時は日々ストレスを感じていたのですが、ある時それが開放感のない環境のせいかもしれないと気付きました。
人間には刺激を求め、新しい場所に行きたいという本能があります。それを抑制せずに暮らせれば、ストレスが軽減されるのではと考え、広い世界の一端を部屋に呼び込むための方法を模索し始めたのです。
ーなるほど。
人間の脳には新しいものを好み、退屈を嫌う「ネオフィリア」という性質があると言いますもんね。だから人は時々旅に出たり、本や映画で異世界に浸ったりして気分転換する必要があるのです。
日々の暮らしに不満がなくても、面白みのない同じ風景ばかり見ていては息苦しさを感じてしまうもの。忙しい生活の中でも、無理なくリフレッシュする方法があれば嬉しいですよね。
ー始めはどんな方法を模索していたんですか?
まず始めはパソコンのデスクトップを海の画像にしたりしていましたが、その程度では閉塞感は軽減されず・・・。その後もバーチャルリアリティーの技術を活用する方法を模索するなど、さまざまな試行錯誤をしました。
でも何かを注視するというよりも、部屋の一部として風景がある環境をつくることが必要なのだと思い、行き着いたのが、「窓」という形です。
姜さんは、ウェブ関連のスタートアップ、NHN Japanを経て、任天堂でハードウェアの開発をしていたという生粋のエンジニア。最新の技術に目を配りながら、アイデアを実現するタイミングをうかがっていたといいます。
窓としてのアイデアがまとまったのとほぼタイミングを同じくして、4Kの高画質ビデオカメラが普及したり、液晶画面を安価にスリム化できたりする技術革新がありました。これならアイデアを高いレベルで形にできると判断し、Atmoph Windowを開発・販売するために起業したのです。
ー起業のためにそれまで勤めていた任天堂を退職されたそうですが、在職中に培った知識は、開発にどのように活かされていますか?
任天堂は世界規模の商品を作っている会社。そしてAtmoph Windowも世界中で販売する構想を持っていますので、任天堂で得た経験は非常に役に立っています。
特に僕は前職でもユーザーインターフェイスの開発を担当していましたので、例えば言語になるべく頼らないような画面の作り方は、自社商品にも反映されていると思います。
Atmoph Windowには、風景を映し出すほかにも、時計や予定を知らせるカレンダー、天気情報などを表示する機能が付いていますが、どの情報もスッキリとしたデザインで表示され、邪魔になりません。
加えてセンサーに手をかざすだけで画面を切り替えられるなど、スマートな操作性が実現されています。
あくまで窓としての開放感を部屋にもたらすことが主眼なので、その他の情報は主張し過ぎないように気を付けました。そのために表示の方法を工夫したり、センサーの使い心地を試すために何度も実験を繰り返したのです。
世界中の風景が見える窓があったらいいな・・・そんな無邪気な欲求を高い品質で実現するために、最新技術を駆使し、試行錯誤を繰り返す。その姿勢がAtmoph Windowのプロダクトとしての魅力につながっています。
国内外からのニーズを証明したクラウドファンディング
Atmoph Windowは、2015年6月中旬にアメリカのクラウドファンディング「Kickstarter」にて約16万ドル(約2,000万円)以上の資金調達を達成しました。そして2016年には日本のクラウドファンディング「Makuake」で、目標金額の7倍近くもの金額である約680万円の資金調達を達成しました。
ークラウドファンディングへの参加は、開発にどんな影響をもたらしたのでしょうか。
起業したばかりの頃、Atmoph Windowのアイデアをまわりに話すと、シラけた反応が返ってきたり、批判を浴びたりすることもありました。
それが、アイデアを形にしてクラウドファンディングで募って、非常に好意的な反応をいただいたのは、自信につながりましたね。もちろん資金面においても、大きな力になりました。
もしもクラウドファンディングが成功しなければ、このプロダクトは生まれてなかったと思います。
クラウドファンディングでは、支援者の意見やニーズも把握することができます。そこで知った支援者が見たい風景や、機能面のリクエストにも積極的に応えて、Atmoph Windowに反映していったそうです。
企画段階では、癒しのためには自然の風景が必要なのだと思っていました。ところが支援者にはハワイのような自然の豊かな土地に住んでいる人も居て、そういった方は逆に都会の風景を見たいのです。そこで京都、東京、パリなどの都市の風景も充実させることにしました。
また、自分が旅先で撮影した映像を見たいというご要望もあったので、さっそく機能を追加しました。
クラウドファンディングによって、アイデアが共感を集め、資金を得ていく過程はドラマチック。また支援者のニーズに応えることで、アイデアに磨きがかかる効果もあるのです。
現在は初回の500台が完売し、これから順次、支援者の手元に届くそう。追加の販売は9月に予定しているとのこと。
窓から見た場所へ旅に出る—新しい体験のきっかけにも
ーこれからはどのような展開をお考えですか?
現在も新しいコンテンツをどんどん追加しています。アルゼンチンで撮影した氷山のある風景など、なかなか見られない景色もありますし、京都水族館で撮影した大きな水槽で泳ぐ魚たちや、くらげの映像なども用意していますので、楽しみにしていただきたいですね。
さらに今後は撮影した映像をループするだけでなく、ライブカメラを設置して各地の現時点の様子も見られるようにしたいと計画しています。
世界中の “今の風景” を編集なしで見られたら、リアリティが一層アップしますね。毎日見ているうちに、その土地へと行きたくなってしまうこともありそうです。
各地の風景を生活に取り入れることは、旅のきっかけにもなると思います。そこでゆくゆくはAtmoph Windowの風景と連動した旅行の情報も提供できるようにしたいと計画しています。
風景を見ているうちに、その場所に行きたくなったらスマートフォンなどで旅情報にアクセスできるようにする。景色を見てリフレッシュするという目的を、損なわない導線をつくりたいですね。
進化し続けるAtmoph Windowは、部屋で過ごす時間をより豊かなものにしてくれることでしょう。将来は世界に開かれた “もうひとつの窓” をお家に置くことが、当たり前になるかもしれません。
【番外編】 姜さんが、今ハマっている暮らしのアイテムとは?
ー最後に、皆さんに共通の質問です。姜さんの今ハマっている “暮らしのアイテム” は何ですか?
最近アナログレコードのプレーヤーを購入しました。音楽がデジタルデータで流通するのが当たり前になった今だからこそ、アナログレコードに針を落とし、ゆっくりと耳を傾ける時間を大切にしたいと思うようになったんです。
珈琲好きな人がコーヒーミルで豆を曳くように、好きなものに対して敢えて手間を掛けるのが楽しいですね。
それでは、お話を聞かせていただき、ありがとうございました。今後のご活躍も楽しみにしています!
■取材協力:Atmoph window
WEBサイト:http://atmoph.com/ja/
Makuakeプロジェクト掲載サイト:https://www.makuake.com/project/atmoph-window/
購入希望の方はこちらから:https://atmoph-jp.myshopify.com/
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取材・文:蜂谷智子/撮影:cowcamo/写真提供:Atmoph window