カウカモマガジン6月号は、クラウドファンディングサービスMakuake特集!!
Makuakeスタッフおすすめの、暮らしをより楽しくしてくれるプロダクトをご紹介していきます。

プロダクト紹介・・・のその前に、Makuake代表・中山亮太郎氏に、我らがカウカモマガジン編集長・中村真広が突撃!
Makuakeの裏側について、たっぷりお話をお聞きしました。前編・後編の2回に分けてお届けします!


日本でも徐々に浸透してきた感のあるクラウドファンディングサービス。

主にインターネットを通じて実現したいプロジェクトを公開し、不特定多数の群衆(=crowd[クラウド])から資金を調達(=funding[ファンディング])する仕組みのことで、企業はもちろん、個人でも世界中の人から比較的短期間で資金を集められる方法として注目を集めています。

なかでも個性豊かなプロジェクトが揃うのが、2013年にスタートしたサイバーエージェントグループ運営の『Makuake』です。革新的なIoT製品から日常で役立つサービス、ユニークなお店などのプロジェクトが毎日登場し、ウェブ上でプレゼンテーション! 好奇心旺盛な新しいモノ好きにはたまらないと評判です。

何を隠そう、我らがカウカモマガジン編集長・中村真広もMakuakeファンのひとり。そこで今回は、Makuake代表・中山亮太郎氏と中村が対談を敢行! 誕生秘話から運営メソッド、これから目指すものまでまるっとお聞きしました。

新商品しかないヴィレッジヴァンガード、はたまたビックカメラみたいな場所

中村

さて、早速いろいろとお聞きしたいと思います。まず、1ユーザーとしての意見ですが、Makuakeは面白い雑貨屋さんに行く感覚で見てしまうんです。

中山

そうですね、さすがです(笑)。ヴィレッジヴァンガードとかビックカメラをのぞく感覚に近いけど、違うんですよね。言わば「ウェブ上の雑貨屋」で、それだけでもわくわくするんですけど、扱うものがすべて新製品という。Makuakeでは、基本的にすべて “見たこともないような新しい製品やサービス” が、毎日のようにアップデートされていってる。通常の小売店では絶対に表現できない、インターネットだからできることだと思います。例えばamazonはリアルの書店をインターネット化したものですけど、Makuakeは何をインターネット化したかというと・・・表現できないんですよね。

中村

例えばソニーだとかメーカーのショールームにコンセプトモデルがあって、商品化は先だけど体験できる場合って結構あるじゃないですか。まさにああいう場所が、ブランドを超えて集まっているのがMakuakeのイメージです。プロダクトミュージアムというか。

中山

そういう感じですね。それをもっと面白くできるように頑張っていきたいです。

新しいものを生み出す人と求める人、それぞれが楽しめる「Makuake」サイト。

中村

例えば僕、ビックカメラが好きで、用もないのに行くんですよ。買わないのにカメラをいじったり、うっかり買っちゃったり。そういう新しいものに出会いたい人って、たぶんamazonじゃ満足できないし店舗にも発売済みのものしかないし、ショールームも特定のメーカーの製品にしか出会えなかったりする。その点Makuakeは、キュレーションしてるからいろんなプロダクトに出会えるというのがすごくいい。

中山

仕組みがすごくよくできてて、在庫を持つ前に発表しているので、基本的に世の中にまだないものばかりなんです。なのでサイトを訪れるユーザー(資金を提供する側)が、「まだ世の中にないんだ」という特別な感覚を体験できる。

日本から「思い切ったものづくり」が生まれる場にしたい

中村

そもそもMakuakeはどういう流れで始まったんですか?

中山

2010~2013年頃まで、サイバーエージェント社員としてベトナムでVC(ベンチャーキャピタル。ベンチャー企業に投資する企業)に所属していました。当然ベトナムで生活していたんですが、気付いたら身の回りに日本製のものが一個もなかった。パソコンも携帯電話もアメリカ製だし、コンテンツも韓国ドラマとか。ファッションもそう。日本で言われるほど、日本製品は世界で使われていないんです。ベトナムだけでなく東南アジア全般でそうで、メディアの発信との温度差、それどころか危機感を感じたんですね。 どうしてこうなったんだ? と思った時に、消費者が求めていないものばかり作られているからなんじゃないか、と。またはありふれたものを格安でとか、価格戦略ばかりが目立っている気がしました。 もっと思い切ったもの、たとえばiPhoneのような製品やコンテンツが、日本からもう一回出てきたらいいな、でもどうやったらいいんだろうと思い悩んでいたんです。海外にいたからこそ日本が客観的に見えて、このままだと本当に取り返しのつかない状況になっていくんじゃないかと。

中山さんがベトナムのVCにいた頃の様子。

中村

なるほど。

中山

ちょうどその時、サイバーエージェントがクラウドファンディング市場に参入することが決まって、その子会社の社長をやらないか、と声が掛かりました。アメリカでクラウドファンディングが新しい製品やコンテンツを生み出すインフラになっているのはもちろん知っていたし、その時の「日本から何かを生み出したい」っていうモヤモヤと結びついて「それだ!」ってピンときて。「その事業、僕に任せてください!」と言ったのがきっかけです。

中村

その当時、日本にもクラウドファンディングサービスはいくつかありましたよね。

中山

ありましたけど、新しいものを生み出していく空気感はまったくないと僕は思っていました。僕たちはクラウドファンディングを広めるのが目的というより、新しいものやサービス、お店がどんどん出てくる状況をどういうふうに作っていったらいいだろうと思っていて、Makuakeはあくまでその手段で。その目的だけ見て走ってきたのはありますね。

中村

もともとVCにいたからこその目線もあったんですか? 新しい芽を大きなものにしていこう、というような。

中山

VCだけでは解決し切れないテーマだと思っていたんです。VCは事業や経営者に対する投資をするのですが、その製品がヒットするか、お店が流行るかといった消費者的な判断についてはまた別の感性が必要になり、そこは中々難しいと思っていた。消費者が「そういうの作ってほしいと思ってた!」という感覚に背中を押されて新しいものが生まれていく仕組みがあれば、みんな思い切ったものを作りやすくなっていくんじゃないかと。VCにいたからこそ見えた「VCと補完関係になれる必要インフラ」という視点はあったかもしれないです。

中村

サイバーエージェントの中で新会社を立ち上げたいという気持ちは前からあったんですか?

中山

ありました、ありました。会社を作りたいっていうことは入社前から言っていて、藤田社長にもずっと言っていたんです。立ち上げが決まってベトナムから帰国した夜と次の夜に、絶対一緒にやりたいと思っていたメンバーに連絡して口説いて(笑)。立ち上げメンバーの8人は、今も全員一緒にやっています。

Makuake立ち上げ当時のメンバーと。新しい挑戦にみんなが心躍らせている様子、伝わりますか?

中村

素晴らしいですね。一番最初のリリースって、スタメンじゃないですけどサービスのキャラクター付けに関わるから重要じゃないですか。最初はどういうルートで、どういう人に声を掛けたんですか?

中山

それこそ「面白くて新しいことを仕掛けようとしている人を探して、使ってもらおう」と。ほぼ戦略なし(笑)。決めちゃってもよくないと思ったんですね。市場もよく分かってないのに、ずれた所に玉を撃ちまくったらやばいなって思っていた。僕たちの強みは圧倒的な運動量だよねってことで、ひたすらいろんな方に会ってました。

作り手のブランドネームは関係ない。「新しくて面白いものを生み出そうとしているか」だけ

中村

当時の日本のクラウドファンディングは、なかなか額が集まりにくかった印象があります。

中山

メーカーなど「作る人側」に、クラウドファンディングというものがまったく(!)認知されてなかったです(笑)。今でも浸透してないですね。日本のクラウドファンディングってちょうど震災後に始まったのもあって、どうしてもチャリティーとか寄付の印象が強かった。もちろんそれも大切なんですけど、世界に目を向けると、基本的に新しいものを作るのに使われていて、すごくギャップがあるなと思っていたんです。

中村

なるほどなるほど。

中山

何回も会社がつぶれるかもと思いましたし、何回も「日本でクラウドファンディングはダメなんだ」と思ったりして。芸能人に特化した寄付のサービスがアメリカにあったので、そういうサービスにシフトしようかって心が折れそうになった時もありました。

中村

裏ストーリーですね、それは(笑)。

中山

でもその時、藤田社長に「お前がやりたかったのってそういうことなんだっけ?」って一言、ビシッと言われて。それで、本当にやりたかったインフラ作りってそこじゃないなって思い返して歯を食いしばって続けたら、次々とメーカーさんが使ってくれるようになったんです。ソニーさんも使ってくれる状況になったので、これはいける!と。

スタートアップのWiLとソニーの合弁企業Qrioの世界最小のスマートロック「Qrio(キュリオ)」。Makuakeで発表早々に目標額を達成し、現在好評発売中!

中村

今、ソニーや東芝などの有名ブランドがMakuakeの仕組みをむちゃくちゃ使ってるじゃないですか。そういう潮流ができ始めたきっかけはあったんですか?

中山

「お金集め」っていうステレオタイプな印象を、僕たち自身が無視したのはあるかもしれないです。クラウドファンディングの直訳は「群衆からお金を集める」なんですけど、僕たちのイメージする定義は「新しいものを生み出す」。それをしっかりメーカーに説明していったら、まず反応してくれたのは中小のメーカー、スタートアップのメーカーでした。ハードウェアだけでなく、ファッションとかインテリアのメーカーもありましたね。

中村

そうなんですか。

中山

Makuakeを使えば、量産する前に世の中の反応が見られる。だから在庫を持つ前に売り上げがある程度予想できる、プロモーションにもテストマーケティングにもなる、だからこれを使わない手はないんだよって声が上がってきたんです。それを聞いていたら「メーカーの規模は関係ない、Makuakeの仕組みは彼らが求める本質を捉えてるんじゃないのか」っていう感覚があって。実績が積み上がってきた頃にソニーに使ってもらってみたら、まったくもって企業の規模は関係なかった。共通していたのは「新しくて面白いものを生み出そうとしているプロジェクトかどうか」。そこだけだったんです。 僕らはメーカー出身ではないので、立ち上げのときはメーカーにとってのメリットが分かってなかったんです。だから実際にメーカーの人の声を聞いて、いろんなことを教えてもらった。その積み重ねで、Makuakeはサービス設計も含めて細かいところまで新製品を生み出しやすい仕組みになっています。メーカーの担当者と飲みに行ったり、時には何人か集まってもらってヒアリングというかダメ出し会(笑)をしていただいたりして、サービスをブラッシュアップしていますね。

資金を提供するユーザー側こそが楽しめるように

中村

立ち上げ時は復興支援やエンタメ寄りなどいろいろなプロジェクトがありましたけど、どういう流れでだんだんプロダクト寄りというか、メーカーをサポートする体制に変化していったんですか?

中山

そうですね。一番は、お金を出す側のユーザーがプロダクトに対して喜んでくれていることが、見ていてはっきり分かったんです。よくクラウドファンディングでは「知り合いからお金を集めてすごく大変だった」て聞くんですけど、新しいプロダクトに関するプロジェクトの場合、まったく言われなかった。作っている人に会ったこともない人が、ブランドネームも関係なく「その製品が面白いか、作って欲しいか」でお金を出すか決める。それを見たとき、明らかにユーザー側が楽しんでいるなあという感覚があって。 クラウドファンディングサービスって日本で100ぐらいあるらしいんですけど、掲載したい人と同時にお金を出してくれる顧客に向き合っているサービスは中々少なかったりする。実際にお金を出してくれる人の顧客体験は二の次だど、リピートしてくれないですよね。

中村

それはほんと、あると思います。

中山

僕らは人数も多いので、作る人とユーザーの両方にしっかりと向き合って、両方の体験を最大限面白くしていく、っていうことにはすごく気を使ってますね。毎日次々に見たこともないもの、ついつい人に言いたくなっちゃうユニークなものが生まれてきて見逃せない! という体験を提供したい思いでやっている。それもあって、リピーターも今めちゃめちゃ増えてるんです。ああ、徐々にハマってきてくれてるのかなあと。至らないところだらけなんですけど。

Makuakeから、暮らしを楽しくするアイテムを紹介!

中村

さて、カウカモマガジン6月号では、Makuakeで掲載していたプロジェクトの中から、暮らしに取り込める3つのアイテムを紹介する予定です。そこで、中山さんからも、この3つのアイテムに関するエピソードやお薦めポイントをいただけますか? まず最初にスマートなデジタル窓Atmoph Windowについて! (こちらで紹介中!

壁や窓に設置するだけで、好きな景色を楽しめるデジタル窓「Atmoph Window」

中山

プロダクトオーナーの姜京日さんは元任天堂社員の方ですね。大手企業出身の勢いのある方が、自分で事業を立ち上げてMakuakeを使ってくれたことは、実はすごく感慨深いです。そういう方に使ってもらうのを狙っていたといいますか、大企業にはすごく優秀な方が多いじゃないですか。その中には、会社の外に出ていって面白いことをやろうと考える方もいる。自分で小回りのきく環境をつくって、スピード感を持って新しいものを作っていく状況って面白いな、と思っていたので、プロダクト以上に組織の生い立ち、姜さんの生い立ちが興味深い。

「自宅の窓の外に自然が広がっていたら」という姜さんの思いから誕生。自分で撮影した風景も流せます。

中村

じゃあ、まさにそういう人にMakuakeを使ってもらいたいというロールモデルだったと。

中山

そうですね。Makuakeがどうこうというよりは、日本全体でそういうことができるようになって欲しいというのもあったので。

中村

続いて、音を奏でるテーブル、SOUND TABLEのプロジェクトはどうですか? (こちらは6月中旬記事公開予定です!)

テーブル自体が音を奏でるスピーカー内蔵テーブル「SOUND TABLE」

モダンでシンプルなデザイン。ダイニングテーブル、ローテーブル、ベッドサイドテーブルの3タイプ。

中山

彼らの強みはインドネシアに拠点を持っていて、家具の製造能力がすごく高いこと。それがインターネットとコネクトして新しい体験をつくっていくということがすごくグローバルだし、IoTという面でも注目です。オーナーはふたりいて、和田さんはもともと家具のプロで、町野健さんはインターネットに強い(キュレーションマガジンantennaの発案者!)。そのふたりのコラボレーションでどういうものが生まれてくるのかなって、すごくワクワクしながらお話を聞きましたね。実はサイバーエージェント・ベンチャーズで出資もしているので、VCとクラウドファンディングのコラボレーションという点でも、結果がどう今後の成長につながっていくのか楽しみです。

中村

なるほど。それは楽しみですね! そして3つめ、スマホ連動キッチンスケールハカルスはどうですか? こちらのオーナーの藤原健真さんも元ソニーの社員の方で、プレイステーションの開発を手掛けられた方だそうですね。(こちらは6月下旬に公開予定です!)

乗せた食材の栄養をスマホで計算できるスケール「ハカルス」

中山

そうなんです。そうですね、「ハカルス」は京都に拠点がある会社で、大阪支社のスタッフが担当しているんですけど、サイト上に載せる写真素材をどうしたらいいか相談されたことが印象深いですね。ターゲットは誰か、そのターゲットにどういう写真見せると響くかなとか、いつも相談されたら一緒に考えるんですけど、ハカルスに関しては僕が料理をしないので(笑)、想像するのがすごく大変で。他の料理するスタッフを呼んで「どういう写真だったらいいか」「このプロダクトを使いたくなるのはどういうシーンか」と考えて写真をあげてもらったり直前まで修正したり、担当者は大変だったと思います(笑)。

スマートフォンが自動で栄養成分を計算して、クラウドに記録してくれるから簡単!

中村

中山さん自身がそこまでクリエイティブなディレクションをされるんですね!

中山

しますね。ターゲットに響くものなのか、パッと見てターゲットが欲しいと思うかどうか、その感覚はすごく重要なので、そこらへんはいっぱい悩んで考えます。

中村

そうなんですね! ・・・そんな気になる、プロジェクト掲載の舞台裏については、後半で詳しくお聞きしたいと思います。そして、今お話しいただいた3アイテムについては、今月号でプロジェクトオーナーさんに誕生秘話を根掘り葉掘り聞いてきました! 記事公開をお楽しみに。

(つづく)

▶︎6月号Makuake特集の記事はこちらからどうぞ。 塗るとあらゆるものを金属に変えてしまう素材(!)や話題のフィラメントLED電球「Siphon」の記事も。

▶︎5月号では「トウキョウアウトドア」をテーマに、ねぶくろシネマ/INOUT/GO OUT Livin'/snow peakを取材しました!

■取材協力:Makuake