中古マンションを購入し、楽しくリノベ暮らしをしているお宅へ訪問インタビューさせていただく「リノベ暮らしの先輩に聞く!」。

今回は、“なるべくDIY” でフルリノベーションを実施した、三上さんご一家の住まいを訪ねました。


横浜・山手エリアの小高い丘の上に建つ、築38年になるマンションの一室。ここは、施主の三上さんご夫婦が3年ほど前に未改装の物件を購入し、フルリノベーションを施した住まいだ。

室内は躯体を現しにしたラフなデザイン。モルタル系左官材で造作したテレビラックや黒の室内窓が調和している

ご主人は職場の「DIY部」に所属するほど根っからのDIY好きで、インダストリアル系の内装がお好きだという点でも奥さまとは趣味・趣向が一致しているそう。

そんなおふたりがリノベーション会社である空間社に出した要望は、『なるべくDIYでリノベーションをしたい』というものだった。

リビングスペースの壁面は板張りの上にくすんだグレーを塗装。木目のニュアンスを絶妙に残した

ご主人「リノベーションエキスポ」というイベントで空間社さんを知って、相談をしてみたらとても真摯に対応してくれて。DIYでリノベをしたいという、ちょっと無茶な要望も受け止めていただきました。

当初は幅広い範囲のDIY工事を考えていたそうだが、打ち合わせを進める中で、どの部分を職人さんに任せ、どの部分を自分たちで行うかを整理していったという。

こちらはダイニングスペース。右手の壁は珪藻土仕上げで、ご夫婦とその友人によるDIYだ

これは、工期が長引けば、その分だけ家賃とローンの二重支払い期間が続くことと、専門知識や資格が必要なインフラ工事や難しい造作については職人に任せたほうがいいだろう、という判断からだ。

そうして、工事の工程内にご夫婦による施工期間を組み込む形で、三上邸のリノベーション工事が走り始めた。

DIY作業の様子。手間をかけた分だけ愛着が湧いたそう(写真:三上さん)

実際にご夫婦が担当したのは、解体工事、壁や床のタイル張り、珪藻土の左官など。空間社から施工法のレクチャーや工具の手配といったサポートを受け、時には友人が入れ代わり立ち代わりで手伝いながら進められた。

洗面室のタイルもDIYで貼られたもの。端のカットも含めプロ並みのクォリティに仕上がった

ご主人大変でしたけど、結果にはすごく満足しています。いろんな人に手伝ってもらったのでとても思い出深くて、完成する前から家に対してすごく愛着が湧いていました。

■壁式構造を巧みに利用した空間設計

リノベーション前の三上邸は、73.6㎡の専有面積にコンパクトな個室を与えた4LDKという間取りだった。建物は取り壊すことのできない “躯体壁” が多い「壁式構造」だったため、どのような間取りに変えるかが大きな分かれ目となった。

建築時にマーキングされた「かべ芯」の文字も、不思議とこの空間に馴染んでいる

ご主人初期段階では回遊できる間取りの案もあったのですが、収納容量や家電の置き場所が限定されることがネックでした。リビングをなるべく広く取りたかったので、空間を大きく三分割して、効率よく使えるプランにしました。

三上邸のビフォア&アフター。解体できない躯体壁を活かして空間を三分割した

図面を見てみると、「ダイニング・キッチン」「リビング」「収納と寝室」という具合に部屋が綺麗に三分割されていることがお分かりいただけるだろう。注目すべきは、ダイニングキッチンとリビングの間に設けられた室内窓だ。

ダイニング側から窓越しにリビングスペースを見たところ。小さいお子さんの様子も一目瞭然だ

この部分に壁を作ってしまうと、完全に空間が分かれて家族のコミュニケーションも分断されてしまう。そこで、開け締めできる室内窓を設けて、仕切られているけれど、ほどよくつながるようにデザインされたのだ。

■DIYで住まいを育てる

現在はリモートワークが中心というご主人は、さらにDIYでダイニングに小上がりを造り、窓際にデスクスペースを設けて作業場にしている。室内窓は引っ越してきた当初よりも、その後お子さまが生まれてから真価を発揮しているそうだ。

現在ご主人が仕事場にしているダイニングスペースは、将来的に追加工事をして個室を設けることもできるそう

ご主人小上がりで仕事をしていても、リビングにいる子どもの様子がわかるのでとても重宝しています。窓を一緒にデコレーションしたりと、親子で楽しく使っていますよ。

ラフな室内に合わせて、室内窓にはざらりとしたアイアン塗装が施されている

お引越し後も、ブラインドを取り付けたり収納棚を造ったりと、DIYを続けているご夫婦。奥さまは『まだまだ完成形じゃないような気がするんです』と語る。

奥さまリモートワークが中心になって、テレビ会議が快適にできるような籠もれるスペースが欲しくなりました。今後も、子どもが成長するにつれ家の使いこなし方も変わってくると思います。今度はDIYで何をやろうか、とよくふたりで話していますよ。

左・トイレの床・壁もご夫婦によるDIY。/右・玄関には広い土間スペースが設けられ、ベビーカー置き場にも困らない

リノベーションという手法が一般化したことで、マンションの住戸もただ “作って終わり” ではなくなってきた。それにしても、愛着を持ってDIYで “育てられている” 三上邸の姿は、なんだか幸せそうだ。

―――――物件概要―――――
〈所在地〉神奈川県横浜市
〈居住者構成〉3人家族
〈間取り〉1LDK+WIC
〈面積〉73.6㎡
〈築年〉築38年(取材時)
―――――設計・施工―――――
〈会社名〉空間社
〈WEBサイト〉https://www.kukansha.com/