こだわって造った住まいだから、大切に住み継いで欲しい。「住み継ぎの先輩に聞く!」では、そんな想いのこもったバトンパスの物語をご紹介。カウカモの「売却サポート」で住まいを売却した方、購入された方の双方にインタビューを行い、新しい住人の元でどのように活かされているかをレポートします。
記念すべき第1回は、フルリノベされた住戸が受け継がれ、さらに追加リノベが施された吉祥寺のとあるマンション住戸の物語です。
[売却時の住まい]
素材の “古さ” も大切にリノベーション
《住まいについて》
前オーナー:Fさん / ご夫婦(売却時。現在は3人ファミリー)
現オーナー:Yさん / ご夫婦
場所 :吉祥寺
間取り:2LDK
面積:約77㎡
築年数:築46年(1974年10月築)
内装:Fさん=未改装状態からフルリノベーション
Yさん=部分的に追加リノベ
ここは、「吉祥寺」駅から少し離れた場所に建つマンションの一室。表通りは賑やかなのに、ケヤキ並木の横道を向いたこの住まいは、窓の外に大木の枝を望み、なんとも穏やか。
2012年に前オーナーのFさんご夫婦がここを購入したとき、内装は分譲当時のレトロなものだったそう。
Fさん:新築マンションには全然住みたいと思うような内装の家がなくて。当時はリノベーションがやっと一般的になってきた頃で、この方法なら自分が住みたいと思う家にできそうだと思いました。
「TRUCK furniture(トラックファニチャー)」という家具ブランドが好きだったので、愛用していたチェアが似合うような雰囲気にしたいなって。
壁を取り払って広いLDKとし、ウォークスルークローゼットを設けることで、2方向から個室へアクセスできる回遊性のある間取りに変更。LDKのフローリングには無垢のオーク材を用いて、温かい空間に仕上げた。
なかでも特徴的なのが、”古さ” を活かした点。レトロなシステムキッチンはあえて分譲当時のものをクリーニングして再利用しつつ、背面にカウンターを追加した。洋室やLDKのドアも、往年の仕様が流用されている。
Fさん:棚板に古材を使ったり、キッチンカウンターの側面に小学校用で使われていたフローリングを張ったり。ピカピカなものよりも味わい深いものが好きなんです。
特にオーク材のフローリングは、きっと時を経てさらに風合いがよくなるんじゃないかなと思い、こだわりました。
[売却について]
価値観の合う人の手へ
フルリノベを施したこの住まいで5年ほど過ごしたFさんご夫婦。より自分たちにフィットする住まいを求めて、カウカモに売却を相談したそう。
Fさん:初めて買ったマイホームだったので、凄く思い入れはありましたし、とても気に入っていました。
でも当時は仕事が忙しくてあまり家にいられなかったし、わたしたちがふたりで暮らすには少し持て余していたんです。
おふたりにとって、家を売却して移り住むのは初めての経験。その売却体験について訊くと……
Fさん:不動産屋さんというと、リノベについてはあまり理解してくれない “スーツを着たおじさん” もまだまだ多いですよね。でもカウカモさんは同じ目線で話ができて、リノベ内容を説明しなくても、その良さをわかってくれるような感じでした。
手続き上の疑問が生じたときも、すぐに調べてくれたり手配をしてくれて、専門知識の面でもすごく安心してお任せしていました。
エージェントさんがすごく近い距離感で伴走してくれたので、業者さんとのお付き合いというより、友人に近いような感覚でしたね。
販売中は週末ごとに3〜4組の希望者が内見をしに来たため、対応には少しご苦労もされたそう。また、次に入居する物件が先に決まったため、いつ売却ができるかという不安もあったというが、結果的に『感覚が似ている人に住んでもらえて嬉しい』と振り返る。
Fさん:お引渡しの前後に現オーナーのYさんご夫婦とお話をしていたら、好きなものが私達とすごく似ていたんです。
もしカウカモで売却をしていなかったら、ひょっとしたら次に住む人が内装を全部ピカピカに変えてしまっていたかもしれません。
YさんとはSNSでつながっていて、その後の住まいを見ていると『あ、ここは残して活用してくれてる』っていうのがわかって、すごく嬉しく思いました。
[現在の住まい]
想いを受け継ぐ追加リノベ
では、Yさんご夫婦へと受け継がれた住まいは、今どんな姿なのだろうか。編集部は、移り住んで3年になるYさん邸を訪ねた。
元々は、自分たちでフルリノベーションをする前提で物件を探していたというYさんご夫婦。しかし条件に合う未改装の物件がなかなか見つからず、諦めかけた時にカウカモで『自分たちの好みに極めて近い』物件と出会ったそう。
Yさん:内装の雰囲気も好みでしたし、フリーランスとして自宅で仕事をしている私たちにとって、LDKの広さも回遊できる間取りもちょうどよくて。自分たちが思い描いていた理想にすごく近かったんです。
そこで、フルリノベではなく、すでにあるものをベースにして追加工事をすることにしました。
Yさん:例えば、私たちはふたりとも料理が好きなので、キッチンは新しく造り直しました。以前のものもレトロで可愛かったんですが、もっと使いやすいように業務用のビルトイン式冷蔵庫が収まるステンレスキッチンに変えています。
システムキッチンを一新しつつ、背面にあるカウンター部分は天板のみ石材に変更。キッチンの横にあった本棚も、DIYで白くペイントを施し、ギャラリーのような “魅せる” 食器棚として使われている。
Yさん:このキッチンと食器棚が特にお気に入りなんですが、きっと自分たちでフルリノベをしていたとしたら、絶対同じような仕様にはならなかったと思います。
既存のものを活かして手を加えたら、思いがけずに使いやすくなったというか。自分たちにはないアイデアとのリミックスが奏功したのが面白いですよね。
なかでも、リノベの大きなポイントがフローリングなのだそう。
こちらのマンションは管理規約により、床材は「LL-45」という遮音等級をクリアすることが定められている。そのため前オーナーのFさんはLDKを二重床にした上で無垢材のフローリングを張っていたのだが、思わぬコスト増となり廊下までは同じ仕様にできなかったという。
Yさん:初めて内見に来た時、LDKの床に凄くこだわったことをFさんから聞いていましたし、それがとても印象的で、この家での暮らしを想像できたんです。
追加リノベでは、まったく同じ製品を探し出して、廊下にも無垢材を張りました。そのことを今Fさんにお伝えしたいですね。『ちゃんと引き継いで、実現できましたよ!』って(笑)
編集後記
3年ほど暮らして、この住まいが『とても私たちにフィットしています』と語ってくれたYさん。草木の生い茂る季節になれば、窓の外にあるケヤキの大木が “ご褒美” のような緑の情景を見せてくれるという。
取材を終えた今、前オーナーのFさんが仰った『この住まいは、きっと幸せだと思います』という言葉が心に触れた。
それぞれの住宅の個性がきちんと評価され、大切な想いを含めて受け継がれていく。そんなリノベーション住宅を増やすことを、わたしたちカウカモは目指している。
撮影:沢崎 友希 / 取材・文:中山 宇宴