■どうしよう、収集がつかない(笑)
ほっこりした心を抱えながら、取材班は続いて “方南町の次世代を担う存在” にもインタビューをすることに。
商店街企画部のアイデアマン・齋藤さん(方南銀座商店街振興組合 理事)の元を訪ねると…… そこへ、次々と集まってきてくださる街の濃ゆーいプレイヤーたち。 み、みなさん!「方南町」について、ぜひお話聞かせてください……!
その場しのぎ増さん:ひとり2時間くらいずつしゃべりますよ! 今日は帰れませんね。
※大混戦のインタビューとなったため、大幅に割愛・編集させていただきます(ごめんなさい)。皆さん大変なエンターテナーでいらっしゃいました。
■方南町にはヒーローがいる
緑色のあなたは、「ベビーカーおろすんジャー」さん! 階段しかない駅で困っている人の荷物上げ下ろしを助けてくれるという、方南町の非公認ヒーロー「ベビーカーおろすんジャー」さんですね! いろんなニュースでお見かけしてました。実際に会えるなんてうれしいです。
おろすんジャーさん:今はもう無事にエレベーターができたので “おろす” 需要はあんまりないんですけど、街の掃除がてら、みんなに挨拶したり、交通安全の “緑のおばさん” をやったりしてますね。毎月の「日曜まつり」では、僕も「おろすん祭り」っていう子どもたちとのイベントをやってます。
■そして、ご当地タレントもいる
そして金ピカのスーツに身を包んだ紳士は、タレントのその場しのぎ増(そのばしのぎます)さん。あっ、商店街のホームページで見た人だ!
その場しのぎ増さん:お祭りやイベントのMCしたり、福引所にいたり、地域密着型の活動をしております。街の皆さんは親しみを込めて「金ちゃん」って呼んでくれますね。みんながすぐ知り合いになって、仲間をつくれるのが方南町のいいところ。ウェルカムな街ですよ〜!
■着々と進む、方南町遊園地化計画
ホラープランナーの日比さんは、なんと方南町の住宅街にてお化け屋敷や忍者屋敷などを運営されています。ローカルなこの街に、どうやったら外から人が集まるようになるだろうか? と考えた結果、『街の中を遊園地にしてしまったら面白いんじゃないか』という結論に至ったのだといいます。
日比さん:方南町に住めば、もうテーマパークに行く必要はありません!
住む場所としては、すごく治安がいいし、優しい感じがする。街にベビーカーおろすんジャーがいる時点で治安がよさそうですよね(笑)
■街に潜む、マニアック!!
白衣姿で頭に輪っかを着けているのは、芸人の佐々木孫悟空さん。お化け屋敷のイベントに出演したことをきっかけに方南町のマニアックな面白さに引き込まれ、この街に根付いたのだとか。新宿とも高円寺とも違うという、方南町のマニアックさとはどんなところなのでしょう? と尋ねてみると……
孫悟空さん:うーん、例えばですけど、神田川や善福寺川が近いじゃないですか。そこには、意外と熱帯魚が繁殖してたりとか、コウモリの巣とかあるんですよ。いろんな生き物が都会に息づいている感じというか……(えーと、方南町は自然が豊か!ってことですかね?)そういうことです(笑)
■どうしてこんなにフリーダムなんですか?
企画部 齋藤さん:こういう、変な人たちも含めて自由にいられるのが方南町の魅力ですね。
キーマンは理事長の新井さんだと思うんです。最初は、僕らで勝手にちまちま地域イベントみたいなことやってたんですよ。それである時 “商店街で乗馬をしよう” って企画が出て
、さすがに予め新井さんに相談しようということでお話ししたら
、すごくすんなり『いいんじゃない!』と受け入れてくれて。それがきっかけで、自然とお互い協力的な関係ができていったんです。
なるほど…… それから齋藤さん自身も商店街振興組合の理事に就任されて、街全体にどんどん新しい風が吹きこむようになったんですね(商店街のトップページをハロウィンのゾンビ画像にしたりとか)!
さらに、齋藤さんは懐から見たことのない紙幣を取り出し、新しく作ったという地域通貨「変ドル」について教えてくださいました。
齋藤さん:子どもたちが掃除とかお手伝いをするとこれをもらえて、商店街のお店やイベントで使うことができるんです。お小遣いを持ってる子と持ってない子の違いみたいなものが気になったんですよね。だからこの「変ドル」が流通すれば、もうみんな同じじゃないか、って。
ベビーカーおろすんジャーさん:方南町はとにかくあったかくて、地方出身の僕にとっては、東京にこんな街があるんだなって思いです。もし住みたい方は安心して来ていただいて…… ぜひ、友達になりましょう!
おおっ、方南町で僕と握手ってことですね。お後がよろしいようで…… みなさま、アポ無しだったのに、本当にありがとうございました。
■異端は承認を経て、挑戦者を待つ
最後に、街の書店・文房具店「秀文堂」を営む高畑 剛さんのお話で、記事をグッと締めたいと思います。高畑さんは方南銀座商店街の理事のひとりで、生まれも育ちも方南町なのだとか。
高畑さん:うちの父が関西出身なんですが、方南町の駅ができた頃にここで小さくお店を持ったのが始まりでした。商店街には大正時代ぐらいからやってるお店があるので、うちはまだまだ新参者です(笑)
ずっと住んでいると街のよさって見えにくいものですが、ここには都会と田舎の良さを併せ持った “とかいなか” 的な暮らしやすさはあるかもしれないですね。公園が多くて、自然も豊かですし。以前、地方出身の知人を連れてきた時には、『うちの田舎と同じ匂いがする!』なんて言われたこともあります。
高畑さん:本屋はもともと図書カードとか地域の福引きの金券とかが使えるので、「変ドル」導入にも抵抗はなかったです。以前はもっとキチッとした金券でしたけど、それが “変” になったってことですね。きっと、やってることはおんなじなのかなって。
新井理事長も言っていた “どの世代も、本質的に見ている(目指す)ものは一緒” という内容のお話にハッとします。やがて「今」は「あの頃」に変化し、また新たな「変」がやって来る。そうやって脈々と続いていく街のストーリーのようなものを感じるのでした。
■わくわくバトンが止まらない
明るく大胆な試みが次々に生まれている街、方南町。ユニークなプレイヤーの活躍ももちろんですが、それを面白がって乗りこなしている商店街振興組合の柔軟さにも驚きました。変化の荒波に揉まれているというより、しっかりパドルを握って乗りこなしている印象です(なんならちょっと『ワーイ』と手を離して楽しんでいるような……?)
新井理事長は、もちろん楽しいことだけではないし、丸ノ内線の直通運転で便利になった反面生まれた課題も見えていると言います。けれどこの街では、誰かにお話をうかがうたびに『これは◯◯さんがね〜』と、次々にバトンがリレーされていきます。誰もが誰かと手を取り合っていて、人と人との結びつきをとても大切にしているように見えました。もしかしたらこの街のエネルギーの源は、このあたりにあるのかも。
これからも、丸ノ内線の西端で強い魅力を放ち続ける「方南町」からは目が離せません!
【INFOMATION】
方南銀座商店街
アクセス:東京都杉並区方南2-23-22 (google map)
ウェブサイト:https://www.honancho.net/
■この街で暮らしたいと思ったら
住まいのセレクトショップ「カウカモ」では、首都圏の中古・リノベーション物件を厳選してご紹介しています。お気に入りの街で自分にぴったりの “一点もの” の住まいを探してみませんか?
取材・撮影:小杉美香 / 撮影・編集:本多隼人