気になるあの街はどんな街だろう。その街で活動するからこそ知り得る、街の変化の兆しや、行き交う人々の違いを「街の先輩」に聞いてみました!「街の先輩に聞く!」、 第45弾は「旗の台」です。
東急大井町線と池上線が交差する旗の台は、意外と知られていませんが、五反田、大井町、自由が丘のどこからも10分圏内。交通の便の良さに加えて、駅の周辺に7つもの商店街があり、毎日の生活がしやすいのが特徴です。
今回は、そんな旗の台で調理加工を行わないでまるごと魚を売る「丸魚専門店 おかしらや 旗の台店」のマネージャー、日下部俊典さんにお話を聞きました。
(※編集部注: 2017年12月26日をもって閉店されたそうです。)
■家族で丸魚を買って料理する街、旗の台
まず魚屋のビジネス構造からして、魚をさばいて売る場合、さばく人も雇わなければいけないし、水もたくさん使うし、大きな冷蔵庫もいるしで、ランニングコストが高くなってしまって、それを価格に反映させた結果、魚の値段が高くなってしまうということが起きてしまいます。
なので、その分をカットして美味しい魚を安く売ってもうまくいくんじゃないかという発想でした。
調理加工を一切行わないで魚を提供するというおかしらやのコンセプトについてそう話す日下部さん。ターゲット層は “魚をさばくことができて、価格感度が高くて美味しい魚を食べたい人”。そんなおかしらやにとって、旗の台は出店にぴったりの場所だったようです。
中目黒なんかより少し郊外に出すのがいいと考えました。旗の台はその条件にあっている上に、競合となりうるところもほとんどなかったので、ここがベストだとなりました。
商店街が7つもあって毎日の買い物に便利な旗の台は、家族住まいの家庭が多く、実際に開店してみると、店には50代や60代の主婦を中心にお客さんが集まり、休日には家族連れなども多く訪れるそうです。
■丸魚から広がるコミュニティ
旗の台駅の周辺を歩いてみて気付くのは、池上線のホームに直結した東口を起点とした商店街と、大井町線と並行して中原街道から隣の荏原町駅まで続く長い商店街、そしてその間をつなぐ商店街から構成されているということです。
実はこのような街になったのには、旗の台駅の成り立ちに秘密がありました。旗の台駅は1951年までは、池上線の旗ヶ岡駅と大井町線の東洗足駅という2つの駅で、旗ヶ岡駅は200mほど五反田よりに、東洗足駅は170mほど二子玉川よりの中原街道近くにありました。1951年までは、それぞれの駅を中心に発展していた商店街が駅の統合によって広がっていったと考えられるのです。
このあたりは個人店が多くてアットホームなんです。オープンのときもビラを置いてくれたり、余った魚を買ってくれたり、駅前の惣菜屋さんはいつも魚を買ってくれてそれを美味しくして出してくれますし、お店同士の横のつながりもあって人情味がすごいありますね。
お客さんもこうして食べたら美味しいよとか勝手に営業してくれるし、温かいんですよ。
■魚は「ひとつのコンテンツ」
地元密着の個人商店も多い下町のような街だから、魚を介したコミュケーションが自然と生まれて、それがお店に良いように働いているようです。魚は「ひとつのコンテンツ」だと言う日下部さん。おかしらやでは、調理加工を行わない代わりに動画や冊子で魚のさばき方や調理方法、匂い対策やゴミの処理方法などを発信しています。
お店を起点に地域のコミュニティができたらいいという思いはありますね。若者が持っていなくてお年寄りが持っているのって、魚のさばき方や料理の仕方についての知識だったりするので、それを伝達することで、旗の台が、魚が当たり前に食卓に並ぶ地域になってくれたらいいですね。
そのままの魚を見る機会があまりない子どもたちは、お店で実際に魚に触るなどして喜んでいるそうです。調理加工がされていないからこそ生まれるコミュニケーションが、あらゆる世代を繋げるきっかけになっているのかもしれません。
「丸魚をもっと身近に。もっと楽しく。」をミッションに掲げるおかしらや。2020年へ向けて、丸魚から広がるコミュニティが旗の台という街自体をもっと身近に楽しくしていくのではないでしょうか。
<丸魚専門店おかしらや 旗の台店>(※編集部注:2017年12月26日をもって閉店されたそうです。)
住所:東京都品川区旗の台4ー7ー7
電話番号:03-6426-9290
営業時間:10:00〜19:00
定休日:不定休
ウェブサイト:https://okashiraya.jp/
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取材・文:石村研二/撮影:石村研二・cowcamo編集部/編集:THE EAST TIMES・cowcamo編集部