気になるあの街はどんな街だろう。その街で活動するからこそ知り得る、街の変化の兆しや、行き交う人々の暮らしぶりを「街の先輩」に聞いてみました!「街の先輩に聞く!」、 第35弾は「六本木」です。
日本有数の歓楽街・六本木。「夜の街」という印象が強かったこの街は今、変わりつつあります。2003年の六本木ヒルズを皮切りに、2007年には東京ミッドタウンと国立新美術館、その後も六本木一丁目方面などで数々の大規模再開発が進みました。
度重なる再開発で六本木は今、どんな街に変わりつつあるのでしょうか。かつて六本木のITベンチャー起業家らが集まるバーとして有名になった「awabar」で、ここ数年の六本木のめまぐるしい変化について聞きました。
■ITベンチャー出会い系バー
awabarは、さくらインターネット株式会社の共同創業者でもある小笠原治さんが2010年12月にオープン。店があるのは六本木の中心・4丁目交差点とミッドタウンの間にあるエリアで、小さな店が軒を連ね、その間にところどころ古い民家がある、六本木の発展から取り残されたような場所です。実際にオープンした頃には周りは閑散として人通りもなかったそうですが、なぜここに店を構えたのでしょうか。同店の社長・児玉麻美さんはこう話します。
特に六本木で、というわけではなかったようですが、1階の道路に面した場所でスタンディングをやりたくて、探していたらここにたどり着いたんだそうです。本当は女の子がひとりで飲みに来れるバーを作りたかったみたいです。
児玉さんがこの店で働くようになったのは、オープンから1年ほど経ってから。最初は六本木の他の店で働いていて、お客さんとして来ていたのだとか。「当時は本当にキャバクラとかばかりでこういうお店は珍しかった」というように、これまでの六本木のイメージとは全く異なるお店だったようです。そのせいか、あまり流行ってはいなかったそう。
できてすぐは小笠原さんの友達が中心で、著名なIT起業家さんたちも来てくれていたみたいです。そういう人のつながりでIT業界の人が来て、そういう人たちが常連になって。でもほとんど常連しかいませんでしたね。それがツイッターで広まって、ITベンチャーの人達が集まるようになり、ベンチャー同士がつながるような場になっていったようです。
実際に、ここでの出会いが事業提携や買収に繋がった例も少なくないのだとか。なかなか横のつながりを作るのが難しいベンチャー企業の人たちが出会いを求めて集まる「出会い系バー」になったのです。
■六本木が「普通の街」に変わる
そんなIT業界の人達が集まる場所だったのが、2013年ごろから変わってきたと言います。
IT業界の人達も飽きちゃったのかあまり来なくなって、でもその頃からこの辺りに来る人が増えたんです。ミッドタウンのおかげなのか通る人も増えて、スタンディングで入りやすいので、女の人とか、ITではない会社に勤めている人とか、そういう人たちが多くなりましたね。外国人も増えたし、今はごちゃごちゃです。それでも、いろんな業種の人がつながって仕事が生まれたりもしているみたいなので、出会い系の要素も残ってるとは思います。
最近では毎晩お客さんでいっぱいになるというawabar、スタンディングでスパークリングワインを飲むというスタイルも一般的になり、六本木の雰囲気もカジュアルになってきたことで、今では「六本木らしい」お店として認知されてくるようになったのです。
実際、六本木通りからミッドタウン側のエリアでは、キャバクラやクラブはどんどん減り、ダイニングバーや居酒屋などの気軽に飲みに行ける店が増えている印象が強くあります。複合ビルも、1階や2階に大衆的な居酒屋やレストランが入っているところが多くなりました。
誰でも入れる店にしているから、うちのお客さんは六本木の変化にかなりリンクしているのかもしれません。六本木のイメージが良くなったんでしょうね。本当に街に普通の女の人が増えたし、週末なんかは家族連れがいっぱいいますから。
■六本木に住むことはステータス
六本木の街が変わり、客層が変わる中で、六本木に住んでいる人が店に訪れることも増えたそう。
このあたりと西麻布の間くらいに住んでいる人も歩いて来たりしますし、ヒルズやミッドタウンに住んでいるセレブの人も来ますね。ランニングのついでに寄ってシャンパン1本開けて、1杯しか飲まずに残りは振る舞って帰る方なんかもいました。
六本木ヒルズの住居棟といえば昔「ヒルズ族」という言葉も生まれた高級マンションとして有名ですが、東京ミッドタウンにも超高級賃貸住宅があり、大企業の社長さんなどが住んでいるのだそう。「住む街」としての六本木はもはや、ブランド化しているのかもしれません。
住んでいる人は住みやすいって言ってます。確かになんでも揃っているし、タクシーに乗ればどこにでもすぐ行けるし、治安も良くなってますし。でも、やっぱりギラギラしたイメージはありますね。六本木に住んでますって言いたい、ここに住めるくらい稼ぎたい、そういう人が住みたいと思ってるんじゃないでしょうか。
■これからの「六本木らしさ」を求めて
だんだんとカジュアルな街になってきた六本木、さらなる再開発によってこれからどのような街になっていくのでしょうか。児玉さんが紹介してくれた「今の六本木」らしいお店から、その姿が浮かんできます。
もともとお客さんだった方が始めた店なんですが、yeloというかき氷屋さん。朝までやっていてお酒も出すんですけど、お酒を飲む人も飲まない人も楽しめてすごい人気なんです。10代の女の子も行列してますよ。
芋洗坂近くにある「yelo」はかき氷ブームと言われ始めた2014年にオープン、1年を通してかき氷専門店として営業し、朝まで営業というスタイル。若い女性でも気軽に入れるこうしたお店が人気になるのが、今の六本木なのです。
六本木で世代交代が起きているんじゃないでしょうか。リーマンショックのことなどをあまり知らない若い人たちが六本木に憧れるようになって、そういう人たちが求めるカジュアルな六本木に変わってきた。これから5年10年でさらに変わっていくのかもしれません。
六本木ヒルズができて十数年が経ち、今の若い人たちにとって六本木は、きらびやかな憧れの街になってきていると言えます。それでもやはりどこかギラギラした感じがあるのも六本木で、そんなイメージに憧れる若者たちが、これからの六本木を作り上げていくのでしょう。
<awabar>
住所:港区六本木4-10-11 小田切ビル1F
電話番号:03-6804-5739
営業時間;月~土 18:00-27:00(L.O)
定休日:日・祝
ウェブサイト:http://awabar.jp/
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取材・文:石村研二/撮影:石村研二・cowcamo編集部/編集:THE EAST TIMES・cowcamo編集部