「ライフカタログ - Atelier Kitchen」リリース記念企画・後編。ACTUSさんに北欧インテリアの特徴や魅力を教えていただきました!


カウカモが提供しているパッケージリノベーション「Atelier Kitchen(アトリエキッチン)」の家具セレクトにご協力いただいた、ライフスタイルストア「ACTUS(アクタス)」さんに北欧インテリアの魅力を聞く本企画。

後編となる今回は、「アトリエキッチン」でも採用している、デンマーク家具の“黄金期(詳細は前編にて!)” を経て生まれた名作家具についてお話を伺います。

前編に引き続き、天王洲にあるコンセプトショップ「SLOW HOUSE(スローハウス)」とカウカモプロデュース物件にて、ACTUS 店舗外商部 上村 海(うえむら かい)さんへインタビュー。

■デンマークならではの灯り

まずご紹介いただいたのが、前編でも名前の挙がったルイスポールセン社のペンダントライト「PH5」。連なった4枚のシェードが印象的ですが、どうしてこのような形をしているのでしょうか?

こちらの二灯は、「PH5」をひと回り小さくした「PH5 MINI」。

この形は対数螺旋(※)と呼ばれる曲線に基づいて、緻密に計算されて導き出されたものなんです。

みなさん、食事の時に椅子に座られて『ランプを見上げてしまい眩しい思いをした!』なんて経験はありませんか?

「PH5」は光の反射を4枚のシェードによってコントロールしていて、どこから覗いても光源が見えず、グレア(光のぎらつき)を極力感じないようにつくられていますから、その心配はないんです。

こうした優しい光を演出するデザインは、まさに夜の長いデンマークならでは。照明と付き合う時間が長い分、家族が安らかに使えることが大切で、ぎらつきのない柔らかい光が生み出されたというわけです。

当時としてはあまりにミニマルで斬新なデザインだったため、すぐには受け入れられなかったそうですが、生活に根差した設計が次第に市民権を得て、非常に多くの人に愛されるランプとなりました。

※アンモナイトやオウムガイの殻など、自然界によく見られる螺旋の一種。

なるほど、この印象的なフォルムにはそんな合理的な理由が……お話にあったようにダイニングで使用する場合、取り付け方にもポイントがあるのでしょうか。

まずはサイズ選びですが、直径50cmの「PH5」とひと回り小さい「PH5 MINI」の二種類があります。

ここではMINIのタイプを二灯吊りしていますが、例えば4人掛けのテーブルですと通常タイプを一灯吊るしていただいてもよいと思います。

設置する高さは、テーブルの天板からシェードの端部まで60cmを目安にしてみてください。

位置が高くなるほど照射範囲は広がりますが光は弱まってしまうので、立ち上がったときに頭に当たるのが気になる場合は、70cmくらいまでで調整していただくのがおすすめです。

■馬車づくりのノウハウが活きるソファ

続いてご紹介いただいたのはアイラーセン社の「ストリームライン」と呼ばれるソファ。こちらはどのようなソファなのでしょうか?

まずはアイラーセン社についてご説明をすると、もともと1895年に創業した馬車メーカーで、現在ではデンマークを代表するソファブランドとして知られる会社です。

かつて製造していた馬車は、街中を走るものではなくハンティング用のものだったため、馬車メーカーとしての同社は、悪路に負けない頑丈さと乗り心地の良さを突き詰めたものづくりが特徴でした。

そしてそのノウハウは、時代が移り変わって1900年代前半にはバスのシートに、1930年代頃からは家具へと受け継がれているんです。

「ストリームライン 」は、肘掛が細身につくられているのが特徴。そのぶん座面が広くなり、同程度の幅のソファよりもゆったり座れるそう。『都心のマンションは大きなソファを置くのが難しい場合が多いので、コンパクトなこのモデルがおすすめです』と上村さん。

馬車づくりの技術が活きていると聞くと、とても頼もしい印象です……!一般的なソファとはどんな違いがあるのでしょうか?

ポイントは大きくふたつ、フレームの組み方と素材です。

ソファには木のフレームが中に入っているのですが、木と木をガンタッカーという大きなホチキスのようなもので接合するケースがほとんどです。

もちろんそれでも十分な強度は担保されるのですが、アイラーセン社の場合は馬車と同じようにダボ(※)を使って職人の手で丁寧に組み上げています。

そして頑丈さと座り心地を両立するために、人が座る箇所には粘りのある材を、強度が必要な側面には硬さのある材をというように、フレームに使用する素材を適材適所使い分けているんです。

こうしたつくりかたは当然コストがかかるのですが、見えない部分の品質にまでこだわった同社のポリシーが感じられると思います。

※木材を接ぐときに、両材の接合面に差し込んでずれを防ぐ小片。

裏地にはアイラーセン社の馬車のロゴが入っている。ちなみに日本で同社の商品の販売権を持っている会社は「ACTUS」さんのみ。

フレームが丁寧につくられているため、カバーなどの交換を行えば何十年も付き合っていけるソファなんですね。とはいえ、生地やクッションもなるべくであれば長持ちさせたいです。そのために何かコツがあれば教えてください!

ソファの生地やクッションはどうしても消耗してしまうのが宿命ではあります。「ストリームライン」のクッションも100%フェザーですので、重力と体圧がかかるうちに上から押しつぶされたように段々とへたってきてしまうんです。

でも型崩れを防ぐように日々お手入れをしていれば、その寿命をグッと伸ばすことができるんですよ。

左・このようにクッションが押し潰れたまま使用を続けると、生地にも癖がついてしまうので注意が必要。/右・お手入れの仕方を実演してくれる上村さん。

大事なのは、週に一回程度クッションの中の羽毛を均してあげることです。横倒しにして側面を強めに何度か叩くと、重力で下の方に寄っていた羽毛が元の位置に戻ってふっくらします。

これをやるかやらないかで全然違ってきますので、ぜひこうしたソファをお持ちの方は試してみてください。

■靴職人たちが愛した一脚

最後にご紹介いただいたのが、ワーナー社の「シューメーカースツール」。“シューメーカー” とありますが、靴職人に縁がある椅子なのでしょうか……?

まさにその通りで、17世紀の靴職人たちが愛用していた椅子に由来するものなんです。

当時の職人たちが使っていた椅子は、長年使い込まれることで自然と座り心地の良い形に摩耗していたそうで、そこに着目した職人が自分の椅子の座面を座りやすいように削り込んだことがこの「シューメーカースツール」の起源になりました。

職人たちが長時間仕事をしても疲れない椅子というだけに、最近ではリモートワーク用に導入される方が非常に多いんです。その上コンパクトですから、ちょっとしたテーブルに合わせれば気軽にワークスペースをつくれるということも人気の理由だと思います。

ちなみに三本脚になっている理由は、当時の作業環境である凸凹した石畳の上でガタつかないためだそう。

このスツールは、ワーナーという家族経営の小さな工房が1960年代から変わらず手作業で製造している、ということもご紹介したいポイントです。

前編でもお話した通り、デンマークでは工業化に伴って数多くの家具メーカーが廃業してしまいました。さらに人件費の高騰によって、現存するメーカーも生産拠点を国外に移しているケースが非常に多いんです。

そういった状況の中で、今でもデンマークの職人の手仕事を感じられるというのは非常に貴重なことだと思います。

■北欧家具と住まうなら

今回はデンマーク家具の名作たちについて、ブランドの歴史やデザインの裏側から詳しく教えていただきました。それぞれの家具が生まれたコンテクストを知ることで、より一層その魅力を感じることができたのではないでしょうか。

カウカモでは、今回ご紹介した名作家具をはじめとした北欧家具のコーディネートとリノベーションのパッケージをご用意しています。

素敵な家具たちに囲まれて暮らしたいけど、コーディネートには自信がないという方はぜひチェックしてみてくださいね!詳細はこちらから◎

※カウカモで物件購入された方にご利用いただけます。

>デンマークヴィンテージの魅力を伺った【前編】はこちらから!


【SLOW HOUSEについて】
デザインや機能に「意味」があるか、暮らしをより楽しく・美しく・心地よくしてくれるか、そして地球や社会や人に対して誠実であるかという目線で、世界中から日用品やテーブルウェア、インテリア雑貨などをセレクトする「ACTUS」のコンセプトショップ。

【INFOMATION】
アクセス: 東京都品川区東品川2-1-3(google map
営業時間:11:00-19:00
定休日:水曜日(祝日を除く)
公式HP:https://www.slow-house.com/