カウカモマガジン5月号のテーマは、「トウキョウアウトドア」。
アウトドアのプロに、暮らしをより楽しくするアイデアを聞いてきました!


みなさんは「アーバンアウトドア」という言葉を、聞いたことがあるでしょうか?

「アウトドア」と聞くと、自然に触れる環境でキャンプをするなど、海や山に出掛けていくことをイメージする方が多いかもしれません。

ただ都会で慌ただしい生活を送っていると、アウトドアを楽しみたい! と思っても準備やスケジュールの確保などが大変で、気軽に楽しむ余裕がなかなかないもの。

そんな中、“人間回帰” をテーマに掲げるアウトドアメーカー『snow peak(スノーピーク)』では、都会での私たちの暮らしに歩み寄る「アーバンアウトドア」という、新しい暮らしの提案が始まっています。

今回は、スノーピークでアーバンアウトドアを担当されている吉野真紀夫さんと、アーバンアウトドアに特化した商品をメインに取り扱うショップ「snow peak URBAN OUTDOOR Shop in Shop」をオープンした、エイダイハウジング代表取締役社長 山中泰之さんに、日々の暮らしに「アウトドア」の要素を取り入れることの魅力や、自然と人がつながる新たな取り組みについて伺いました。

左から、スノーピークの吉野真紀夫さん、snow peak URBAN OUTDOOR Shop in Shopをオープンした、エイダイハウジング代表取締役社長 山中泰之さん

アーバンアウトドアを知るには、まずは気軽に体験することから

1958年に、「ものづくりのまち」新潟県燕三条で金物問屋としてスタートしたスノーピーク。山登りが好きだった創業者の山井幸雄さんが、山道具と言えば当時欧米のものしかなかった中、「本当に欲しいものを自らつくる」という志のもと、自らの手で登山用品を作ったところから始まりました。

創業して58年が経つ今も「自分たちが欲しいものをつくる」ことは変わらないと吉野さんは言います。すべてのアイテムが100%自社開発であり、作り手の思いが詰まった製品が非常に多いことで、スノーピークは絶大な人気を誇っています。

アウトドアに少しでも興味のある人なら、このロゴはきっと誰もが目にしたことがあるはず。

現在も本社は、創業の地である新潟県燕三条に。しかも、広大なキャンプフィールドを併設し、実際にキャンプ可能です・・・!

登山用品から始まったスノーピークですが、現代表取締役社長の山井太さんの入社をきっかけに、キャンプ事業が始まり、現在のオートキャンプスタイルを確立。また、活動の領域をキャンプ場から都市や住宅、オフィスへ広げ、「アーバンアウトドア」という、新しい暮らしのスタイルを提案し始めています。それは、キャンプをしない人が多い都市型の暮らしの中でも、自然を感じながら過ごすことができるライフスタイルです。

「アーバンアウトドア」を知るには、実際に体験してみること! というオススメを受けて、スノーピークとコラボし、茨城県水戸市で住まいづくりを提案している、エイダイハウジングの「野遊びできる家」をテーマにしたモデルルームを訪ねました。

水戸駅から車で10分程度の場所にある、野遊び体験ができるモデルルーム「ZERO-CUBE+GARAGE」。

エントランスを抜けると、庭先にはスノーピークのテントが設置されています。

まるでキャンプサイトのような庭。住空間とつながり、“屋外のリビング” のよう。大人の休日のリフレッシュの場としてはもちろん、テントは普段の子ども達の遊び場にも。夜は焚き火も気軽に楽しめるのだそう。

窓を開ければ、アウトドアのような住空間。自然が身近にある住まいづくり

ー日々の暮らしに、「アウトドア」の要素を取り入れる魅力はどんなところにあるのでしょうか。

首都圏や都会で、日常的にハードに働いている方って多いですよね。土日など、休日には自然と触れることで精神を解放する機会が増えるとリフレッシュにもつながります。

私は、「アウトドア」=「海・山・川のフィールドに出掛けること」だけではなく、「身近な住環境からも感じられること」だと思っています。限られたスペースの中で、バルコニーをアウトドア仕様にしてみる、玄関に有孔ボードを設置して道具を引っ掛けてみるとか、キッチンスペースでアウトドアの道具を使ってみるなど、できることから始めていけます。(吉野さん)

ー会社のコーポレートメッセージとして、“人生に、野遊びを。” というのを掲げていますが、ここにはどんな思いが込められていますか?

「野遊び」というのは、非常にいい言葉だなと感じていて。自然とのつながりを表す言葉で、バルコニーで自然を感じながらコーヒーを飲むのも立派な野遊びなんじゃないかと思います。身近なところでできる野遊びが、意外とたくさんあるんですよね。(吉野さん)

スノーピークのチタン製マグに、コーヒーをハンドドリップで淹れる、住宅アドバイザーの石井信也さん。モデルルームでは、野遊び体験会を定期開催しているそう。

淹れ立てのコーヒーを楽しむ時間。開放感のある庭では、気軽にアウトドア体験ができます。

ースノーピークでは、会社の使命を “人間回帰” と表現されていますよね?

そうですね。人間回帰とはつまり、“自然に深く包まれることで人間らしさを取り戻すこと” だと考えています。

実は、アクティブキャンパーと呼ばれる、キャンプ愛好家は800万人弱で日本の人口で6%くらいと言われているんです。スノーピークは、キャンプ製品の提案だけで考えると6%の人たちにしかアプローチできていない状況なんですね。なので、残りの94%の人を癒すことが使命だと感じています。

​だからこそ今、都市部で生活している方にも、自然を感じながら生活ができるライフスタイルを提案しています。(吉野さん)

ーなるほど。そういうことなんですね。

住まいの中で、収納スペースは限られてるじゃないですか。それでも必要な道具はありますよね。そこで、これまで外だけで使うことを推奨されてきたものを、家の中でも使ってみる。逆に、家の中で使っていたものを、外で使ってみることもオススメです。

そうすることで、限られたスペースの中でも、暮らしをより楽しむことができますよ。(吉野さん)

バルコニーも、洗濯物や布団を干すだけに留まらない癒し空間。お昼寝をしたり、バーベキューや焚き火を楽しむことも。

家の中でもアウトドアチェアを普段使いしてみたりと、インテリアももっと自由に。

住まいを内側と外側で区切らず、つないでいくことで、暮らしの中でアウトドアが楽しめます。

毎日を過ごしているリビングやキッチンのアイテムをアウトドア用品に変えてみる。コーヒーを庭で淹れて、ゆっくりと飲みながらくつろいでみる。そうすることで、アウトドアが身近に感じられ、心身ともに癒されることができるのかもしれません。このモデルルームにはそんなライフスタイルのヒントがぎっしりと詰まっていました。

コラボレーションから生まれた、アーバンアウトドア・ショップインショップ

モデルルームに続いて案内していただいたのは、スノーピークがコラボレーションして誕生した、日本初のアーバンアウトドアに特化した商品をメインに取り扱うショップ「snow peak URBAN OUTDOOR Shop in Shop」です。

ー昨年の秋から、Shop in Shopを始められたそうですね。どのような取り組みなのでしょうか。

スノーピークの世界観に共感してくださった住宅業界の企業のみなさんに、お店を持っていただくということを始めています。現在Shop in Shopは、横浜、水戸、千葉にあります。

「新しいことにチャレンジしよう!」と思った方たちによって続々と立ち上がっています。(吉野さん)

もともとはエイダイハウジングのオフィスだった場所に、オープンしたショップ。スノーピークの取り組みに共感したことが、オープンの大きなきっかけとなったそう。

オフィシャルマイスターの認定看板が店頭に。新潟の本社で研修を受け、スノーピークのスタッフ同様に、アウトドアグッズの日常への取り入れ方などを説明することができる証です。

ショップ内では「野遊び」ができるようなグッズを販売、住まいやライフスタイルに合わせてパッケージで提案しています。

ーここはもともと、エイダイハウジングのオフィスだったのですよね?

はい。昨年3月にスノーピークと出会い、その世界観に強く共感し11月にはお店になりました(笑)。

リビングでの家族の会話を外でも楽しんでもらいたいなと、もともと感じていて。野遊びに触れていない方への提案ができたらと始めました。スノーピークでの体験を通じて、フィールドに出たことがない人にも、出て行くきっかけをつくりたいと考えています。

また、日常生活の中では、工務店や設計事務所など住まいづくりのプロに会いにいく機会はなかなかありませんよね。こういったお店になったことで、お客さまが気負わず普通に入ってこれる空間になりました。(山中さん)

ー確かに、住まいづくりのプロに話を聞く機会はなかなかないですよね。

実際、ふらっと来たお客さまはもちろん、キャンプが好きで訪れる方、家を建てたいと思って来た方など、いらっしゃる動機はさまざまです。住宅業界だけじゃできない取り組みなので、楽しいだろうな! と感じるままにスタートしました。

今後、この取り組みは「新しい家づくりの伝え方」につながっていくんじゃないかなと感じています。 ただ流行ってるからやっていくんじゃなくて、本物のライフスタイルを提案していくのが楽しいです。(山中さん)

店内には、子どもから大人まで、楽しみながら過ごせるコミュニティスペースも。お客さんが思い思いにショップを楽しんでいる様子が伺えます。

顔を合わせることで楽しさが広がる、野遊びコミュニティの輪

スノーピークファンの交流の場として、店内にバーカウンターも併設したところ、うれしい変化が起きたようです。

「山中さんから、コミュニティの場がつくりたいという声がありました」と吉野さんは話します。

ここでは、昼夜を問わず明るいコミュニケーションが育まれています。野遊びやキャンプ談義をしたりと自然と交流が生まれ、お客さま同士でスノーピーク製品のよさを語り合い、営業もしてくれます。(笑)(吉野さん)

リアルな居場所で、人対人のコミュニティを持つということを、住宅業界でもしていきたいと思っていました。 楽しさを求めてくるコミュニティを市を巻き込んでつくっていきたいと思っています。

そして、日々の暮らしの中で野遊びをしていくことを続けて、新しいことを発信していきたいです。(山中さん)

ー確かに、楽しみながら野遊び談義をしているうちに、ゆるやかな心地のよいコミュニティができていきそうですね。今後、ショップからどんな動きが生まれていくのかとても楽しみです!

アーバンアウトドアを体験し、住まいづくりに取り入れる

さて、ここまで水戸でのお話を伺ってきましたが、気になるのは、私たちが気軽に足を運ぶことができる、都内で「アーバンアウトドア」を体験できる場所。身近な暮らしの中で道具を購入し、試してみることはすぐにできそうですが、お出掛けするとしたらどこに行くといいのか聞いてみました。

ー都内で「アーバンアウトドア」を体験できるオススメのスポットはありますか?

東京の昭島市に、モリパーク アウトドアビレッジという、アウトドアに特化した複合施設があるのですが、そこにある、『Snow Peak Eat』というレストランはオススメです。

ここは、日本中を旅する中で食材を知り尽くしたスノーピークが、自然の中で食べるという美味しさを届けるお店です。五感で「アウトドア」を味わいたい方にぜひ訪れて欲しいです。普段キャンプをされていない方も、「食」を入り口に「アウトドア」の世界に入っていけると思いますよ。(吉野さん)

snow peak eatの店内の様子。大きな窓に囲まれた、とても開放的な空間・・・!

ー確かに、“食” が入り口なら、普段アウトドアに馴染みのない人でも、楽しめそうです!

アウトドアメーカーと住まいづくり。一見すると異業種の組み合わせだと感じるかもしれません。しかし、今までになかった出会いによって、私たちと自然を心地よくつなぐ暮らし方を届けてくれる取り組みだと感じました。

遠くにある自然を求めていくだけでなく、庭先やバルコニーでゆっくりとお茶をし自然を感じてみる、という方法は気軽に楽しめそうですね。

みなさんも、アーバンアウトドアという新しいライフスタイルを、ぜひ体験してみてくださいね。

【番外編】吉野さんが今ハマっている暮らしのアイテムとは?

ー最後に、皆さんに共通でお聞きしているのですが、吉野さんの今ハマっている “暮らしのアイテム” を教えてください。

「灯り」ですね。アーバンアウトドアの取り組みを通じて、今までとは違い、家のソト↔︎ナカの考え方が少し変わりました。「ナカ」の空間を見た時に、日本の照明はめちゃくちゃ明るいなと思います。煌煌と点いているというか。自然の中にある光とは違いますよね。(吉野さん)

ー確かに。

そこで体験していただきたいのが「ほおずき」というLEDライトです。

「ほおずき」には、音に反応するセンサーが内蔵されていてロウソクの灯りのように「ゆらぎ」を楽しむことができます。非常に人気のある製品です。

家は、もっと照明が少なくてもいいのではないか? という感覚があります。室内も多少落ち着いた灯りにして、夜になると自然と夜の暗さを感じる。その暗さとともに自然と眠くなる。まさにこの感覚はキャンプならではの時間の流れなのです。この感覚を住まいの中にも取り入れていけたら。(吉野さん)

ほおずきがあるだけで、空間に一気にあたたかみが。

ーなるほど。家の中にいながら、自然を感じられるアイテム、素敵ですね。私も、日々の暮らしの中に、自然やアウトドアのエッセンスを少しずつ取り入れてみるところから始めていきたいです。お話を聞かせていただき、ありがとうございました!

■取材協力:snow peak(スノーピーク)エイダイハウジング

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