気になるあの街はどんな街だろう。その街で活動するからこそ知り得る、街の変化の兆しや、行き交う人々の違いを「街の先輩」に聞いてみました!「街の先輩に聞く!」、 第42弾は「三鷹」です。


JR中央線快速が停まり、中央総武線の始発駅にして、東西線への乗り入れもあり、都心への足回りがよく成田エクスプレスも利用可能な「三鷹」駅。

北口は、ジブリアニメを思わす深い緑が駅前から広がり、整備された並木道が美しい武蔵野市。南口へ降りれば、長い商店街が続く三鷹市。花屋さんのクチナシの花、肉屋さんのシューマイ、そしてロースト中のコーヒー豆・・・肩肘張らない生活の香りが鼻をくすぐり、道行けば「暑いね〜」と声を掛け合う、そんな街。

ある夏の暑い日、地域密着型でありながら、海外からも注目を集める文具店である「山田文具店」のオーナーの山田麻美さんに、数々の文具に囲まれながらお話を伺いました。

■「何か楽しい物あるかな〜」と、お散歩ついでに立ち寄れる文具店

三鷹を中心に、インテリアショップやカフェ、ケーキ屋さん、文具店、古道具屋さんなど複数のお店を展開しているのが、デイリーズグループ。

グループの各店舗は独立して運営していますが、“日常生活を大切に、少しだけ豊かにするお手伝いができたら” という思いを共有する仲間として、ポイントカードを発行し、地域の活性化、三鷹のお散歩の楽しみにそれぞれ一役買っています。

山田文具店は、家具と雑貨のセレクトショップ「デイリーズ」の立ち上げ当初から関わっていた山田さんが、2008年の夏にオープンした文具と雑貨のセレクトショップ。

小さい頃、100円持って駄菓子屋さんに行くの、結構、楽しかったと思いません? そんな感覚で、地元の人がお散歩のついでに立ち寄れるような、「何か楽しいものがあるかな~」って気持ちに応えられるようなお店になりたいんです。

山田さんの思いは、地域だけでなく、インターネット販売を通じ、文具を愛する人に向けて発信されています。

■店を回遊して発見する定番商品の “現役感”

山田さんの声に耳を傾けながら、目に飛び込んでくるのは「懐かしい!」「何これ!?」「面白い〜‼」と思わず口に出したくなる文房具たち。

左上:本物のパンから作った、ミニチュアのパン(*注:食べられません。)/右上:誰もが一度は手にしたサクラプレパスと、クレパス色のギフトタオル。/左下:実はポーチの広辞苑、なんと大きい方は現物も入ります。/右下:学校で実際に使っている、黒板消しまで!

山田文具店では、ペンは「書くもの」などと分類せず、テーマやストーリーごとに文房具と雑貨を取り混ぜて並べています。

そのため、あちこちにペンがあったり、ステッカーがあったり・・・。すると、浮かび上がるのが懐かしの定番商品の “現役感” というのでしょうか? かれこれ、何十年も昔に使っていた、のりや画用紙も全く古く感じないので不思議なものです。

そうなんです。定番アイテムの力って大きいんですよね。デイリーズの仕入れの経験から学んだのですが、例えば、白山陶器のお皿、柳宗理のキッチン用品、ツバメノートなど、いわゆるロングセラーは派手な売れ方はしないけれど一定の売上をつくってくれるんです。

■オリジナル商品を持たずに、オリジナリティー溢れるお店を作り上げている山田文房具店

雑貨のロングセラー商品から、デザイン性と機能面、価格のバランスに優れた商品の魅力と、この地域のニーズが合致していることを感じたと言う山田さん。

メモ帳ひとつでも、100円ショップで十分という人から、銀座の伊東屋でないと気が済まないという人までいますが、この近辺には、程よいこだわりを持った人が多いのかもしれませんね。これも、ちょっといいでしょ? 岩波文庫の表紙のメモ帳なんです。

そして、山田文具店でもうひとつ特筆すべきが「これ、どこかで見たけど、なんだっけ?」というもの・・・。その正体は、業務用、プロ仕様のアイテムたち。

おなじみの業務用の紙物を小分けで提供する。プロ仕様の道具の新たな使い方を提案する。そんな工夫で、店内では家族連れが声を弾ませて、小さなクイズ大会を繰り広げる光景が見られたりと、オリジナル商品を持たずに、オリジナリティー溢れるお店を作り上げている山田文房具店。

上:レジ横のベストセラー商品。お会計中にふと手に取りたくなる、ポップでレトロなデザインのこれは「パン袋」。/左下:しおりやメモ帳としての用途で人気のこちらは、本物の「図書カード」。/右下:どこかで見たことある、ステンレスのトレイ。程よい湾曲でお会計用トレイや、お料理時のオタマ置きとしても使いやすいのは実証済み。実は、これ「医療用トレイ」。

「商品を発掘するのが好きなんですよ。授業参観の時、子供よりも、先生が普段から使ってる道具が気になったりして・・・」と笑う山田さん。仕入れる人が、ワクワクする気持ちを大切にしているお店。だからこそお客さんにも、その感覚が伝わって、つい手にとってしまうのでしょう。気が付けば、取材陣も何点か購入していました。

■諸々が “程よい”、吉祥寺のお隣り三鷹の実力、見たか!

実家も就職も、結婚しても出産しても、中央線沿線、三鷹近辺から離れたことがないという山田さん。

山田さんに限らず「中央線からなかなか離れられない」という声はよく編集部に届いていましたが、三鷹は取り分け子育て中のファミリーにとって、居心地が良いようです。

隣の駅は、「住みたい街ランキング」に殿堂入りの吉祥寺ですが、人気の分、人も多く忙しないと感じる人もいるでしょう。その点、三鷹はJR中央線快速で、新宿まで最短13分、しかも、各駅の始発でのんびり座って行く方法もある上に、緑が多くのどかな雰囲気が残り、生活がしやすいというのが大きな魅力。

行政も子育て支援に注力しており、実際にふたりのお子さんを持つ山田さんは、こう付け加えます。

駅周りの程よい人口密度や、整備されて真っ直ぐの商店街の道スロープの有無を考えると、意外と三鷹の方が子連れにとっては、息抜きついでにぶらぶらできる場所が多いと思いますよ。

デイリーズの家具屋もベビーカーで見て回れるようになってますし、身なりおしゃれなお店と、昔ながらの味のある個人商店とがあって、いろいろが程よい街なんですよ。

上:JR中央線と総武線、スタジオジブリがデザインしたコミュニティバスが並ぶ駅前。/左下:JR線マスキングテープは、電車コーナーの人気商品。/右下:地元野菜を扱うお店は、一日中、賑わっています。

その程よさに気がついている人も多いのでしょう。近年、駅近くにタワーマンションが建ち、子育て世代が一気に増えて、生徒数が急増した学区もあるのだとか。

通勤に便利で衣食住に事欠くことがなく、それでいて子育てしやすく、散歩も楽しい場所が三鷹のようです。

■三鷹の街の散歩道の2020年は・・・?

ジブリアニメの影響か、街や駅でも外国の方を見かけますし、日本の文房具は良いという認識が広がっているようで、海外からの注文が増えているんですよ。

インスタグラムなどから、その魅力が世界へと拡散され、今まさに “ジャパニーズ・ステーショナリーブーム” の到来を感じていると話す山田さん。

この日も、リバイバル人気で “懐かしいのに新鮮” な小沢健二のBGMに重ねるように、フランス語と思わしき会話が聞こえてきました。内容はわからずとも、その口調から、ワクワクする感覚が国籍や文化を越え、伝わっているのだとわかります。

最近、少し駅から離れたところに、新しいコーヒースタンドができたみたいですよ。面白いお店が増えれば、この辺をぐるぐる散歩するのも、もっと楽しくなると思うのでこれからも期待しています。

と、見送って下さった山田さん。マップをみると、三鷹の森ジブリ美術館を筆頭に、三鷹市山本有三記念館、太宰治文学サロンなど文化的な施設にも恵まれたこの地域。

「歩こう、歩こう、私は元気〜♪」と、親子で歌いながら行くもよし、友達やカップルで写真を撮りながら散策するもよし、お気に入りの一冊を片手に、ひとり練り歩くもよし、とにかく散歩が似合う街。

散歩の途中、コーヒースタンドで喉を潤し、文具店に立ち寄って、お土産をポケットに忍ばせれば、心が弾んで大人も子供も、男でも女でも「どんどん行こう〜♪」と、思わず口ずさんでしまいそう。さて、2020年の夏、オリンピックが行われる頃はどんな人がこの街をお散歩をしているでしょう、楽しみです。

山田文具店
住所:三鷹市下連雀3-38-4 三鷹産業プラザ1階
電話番号:0422-38-8689
営業時間:平日 11:00-19:00 土日祝 11:00-20:00
定休日:不定休
ウェブサイト:http://yamadastationery.jp/

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