気になるあの街はどんな街だろう。その街で活動するからこそ知り得る、街の変化の兆しや、行き交う人々の違いを「街の先輩」に聞いてみました!「街の先輩に聞く!」、 第47弾は「祐天寺」です。
渋谷から東横線の各駅停車で3駅。代官山、中目黒と言う「オシャレな街」の代名詞を抜けて、その先にあるのが祐天寺です。電車から見える風景は手前の2駅とガラッと異なり、まるでストップウォッチで時間を止めたような、ゆったりとした街並みに。
この日、夕方に差し掛かる午後4時に小雨の中で見た祐天寺は、オシャレな若者たちが集まる周りの街とは対照的で、しっとりと落ち着いて見えました。この数時間後には、この街に集まる「夜型」の古着屋がオープンし、人が集まってくるというので楽しみです。
駅から降りると東横線とほぼ直角に交わる「祐天寺商店街」が見えてきます。8割以上のお店が築数十年はあると思われる道を右手に眺めながら、線路に沿って左手に向かう「栄通り」をほんの1-2分。
これまた築年数は若くないビルの奥の一角にあるのが祐天寺の人気古着店「KATACHI」。営業時間が午後5時から深夜1時と、まさに「夜型」の古着屋さんです。今回は「KATACHI」スタッフの浦田詠司さんから、人と洋服を通じて見える「祐天寺らしさ」を伺います。
■1年経っても忘れない「洋服とお客さんの物語」
1年以上前に来たお客さんの顔も、その方が買った洋服も覚えています。洋服は1点1点一生懸命選んだもので、持っていた人の物語がある。お客さんも、自分自身のストーリーを喋りながら購入されるので印象に残ります。かなり前のことまで覚えているので、すごく驚かれますが(笑)。
浦田さんのお話からは、洋服とお客さんへの自然で押し付けがましくない愛が感じられます。洋服はデザインだけでなく、質にもこだわって選んでいるそう。例えば、前回の仕入れにかかった日数は23日間。USAロサンゼルスから車で入って幾つものお店を回るのに6,000km以上走ったそうです。仕入れへのこだわりと熱意が感じられます。
また、1年以上前に来たお客さんの顔を覚えているというのも驚きです。「KATACHI」の客層は本当に幅広く、オープンから最初の数時間は学生さん、その後は仕事帰りの社会人、更にその後は祐天寺の居酒屋で何杯か引っ掛けた後の大人たち。そして、最後は深夜まで仕事をしているデザイナーさんや美容師さん。
これだけ多様なお客さんを覚えているのは、浦田さんがそれぞれの方と洋服を通じて丁寧に向き合っているからこそでしょう。
■一緒にお酒で語り合える古着屋
深夜帯にお店を開いているからこそ提供できる楽しさがあると思います。例えば、終電を逃したお客さんが閉店間際に来て、そのままお店が終わった後に一緒にここでお酒を飲むことも。営業時間が終わっているので、お互いにプライベートな事も話しやすいです。
今までで一番長くいたお客さんは、この小さなお店に4時間ぐらい。洋服を見るというより、ほとんどの時間はたわいのない雑談をしていました。
浦田さんは、お客さんのシチュエーションを笑顔でお話してくれました。洋服店なのに、何時間もお客さんがいられるのは、相当心地よい空間だという証拠です。聞けば、お店に来たお客さん同士が友達になる事もあるそうです。
店員さんも、お客さんも、ここに集まる人が気張らず、まるで昔から知っている友人のように、もしくは家にいるように過ごせることが魅力となり、自然に人を惹きつけているようです。
■5年後も10年後も変わらない家のような街
祐天寺は5年後も10年後も、そんなに変わらないと思います。実際に6年ほど前にここにお店を出してから今まで、この街はあまり変わっていません。ちょっと駅が綺麗になったぐらいじゃないでしょうか。
中目黒の隣なのに、変化が少ないベッドタウン感がありますよね。パジャマで夜道を歩いて、ふらっとお店に来ても許されるような、気張らなくて良い街です。
祐天寺に「KATACHI」ができたのは約6年前。オーナーの方が「深夜に出している古着屋は少ないけれど、この時間に出したら面白いと思う」と言って、営業時間を決めたそうです。
実際にやってみたところ、お店は深夜までお客さんが集まる人気店に。その頃から「KATACHI」を追うように、祐天寺に深夜帯の古着屋さんが増えてきました。ほとんど変わらない街の雰囲気を壊さないように、深夜帯の古着屋さんが静かに馴染んでいる様子も、気張らない祐天寺らしさの一つです。新しいお店も、初めて来る人も、まるで家族のように自然に迎え入れてくれる寛容さを感じました。
午後5時。「KATACHI」がようやくオープンする時間、雨の中で少しずつ仕事を終える人や学校帰りの学生が街に集まってきました。散策すれば他にも深夜帯をメインに営業する古着屋さんがチラホラ。それぞれのお店に、この時間を待ちに待ったお客さんたちが笑顔で入っていきます。
この街で不便なことは何もありません。
浦田さんは、祐天寺についてこんな風にも語りました。大きな変化がなくても、必要なものは昔から揃っている。そして気張らない楽しみがある。そんな祐天寺は、住んでいない私にとってもマイホームのように、あたたかく感じられました。
<KATACHI>
住所:東京都目黒区祐天寺1-22-4 クレールAI 101
電話番号:03-5773-5090
営業時間:17:00-25:00
定休日:無休
ウェブサイト:http://katachi-yutenji.tumblr.com/
■この街で暮らしたいと思ったら
住まいのセレクトショップ「カウカモ」では、首都圏の中古・リノベーション物件を厳選してご紹介しています。お気に入りの街で自分にぴったりの “一点もの” の住まいを探してみませんか?
>東横線の隣の駅の様子は?
【 #中目黒 】裏路地にある古民家コーヒー店で繰り広げられる「カフェ文化」 / onibuscoffee
取材・文:丸山夏名美/撮影:丸山夏名美・cowcamo編集部/編集:THE EAST TIMES・cowcamo編集部